2021年(令和3年) 1月8日(金)付紙面より
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鶴岡市のあつみ温泉の旅館「萬国屋」(佐藤太一社長)で、無病息災などを願う伝統のつるし飾り「傘福」の特別展示が行われている。
傘福は、幕を張った傘に布製の細工物をたくさん下げたもので、庄内地方の女性たちが一針ずつ子どもの健やかな成長や招福などを願って縫い、寺社に奉納してきた。北前船で伝えられたとも言われ、伊豆稲取(静岡県東伊豆町)の「雛のつるし飾り」、柳川(福岡県柳川市)の「さげもん」とともに「日本三大つるし飾り」に数えられる。
今回は、酒田商工会議所女性会が山王くらぶ(酒田市日吉町二丁目)に展示している傘福2基を借り、先月30日から1階ロビーに展示した。地元の伝統文化を紹介するとともに、新型コロナウイルスで暗い話題が多い中、新年が明るく、幸多い年であるようにという思いを込めたという。
2基はともに高さ約1・5メートルで、細工物が各100個ほど下げられている。赤い猿をかたどった「さるっこ」は疱瘡(ほうそう・天然痘)よけで赤いものを身に着けた風習から、病気や災厄が「去る」ことを願った。長寿を願う「鶴」「亀」、豊かさを象徴する「分銅」、知恵が授かるようにという「巻物」など、さまざまな願いが込められている。
同旅館は今月3日から11日まで休館中で、12日(火)から再開。女将代理の篤由貴絵さんは「コロナ禍でできることは限られているが、あつみ温泉が今年、開湯1200年で、少しでも明るい兆しになればという願いを込めた。庄内一円が協力し合い、それぞれの魅力を発信できれば」と話した。傘福の展示は今月末まで。