2018年(平成30年) 1月6日(土)付紙面より
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鶴岡市羽黒町手向の羽黒山頂にある出羽三山神社の蜂子神社で5日、明治の神仏分離以来途絶えていた羽黒修験道の修行の一つ、「春の峰」が約150年ぶりに執り行われた。「冬の峰」である大みそかに行われた「松例祭」(国指定重要無形民俗文化財)に続いて、新春に豊作を願う行事。松聖(まつひじり)経験者「既修松聖」らが参列し非公開で厳かに執り行われた。
この日は雪深い山頂の出羽三山神社の三神合祭殿で神事を行った後、松例祭で使われたもみが入った笈(おい)を背負って山伏姿の神官と既修松聖9人が蜂子神社へ移動。ほら貝を吹き鳴らしながら、散米行事や三語拝辞などを唱えた。
かつて羽黒修験には四季の峰として、季節ごとの修行があった。「夏の峰」は7月15日の花祭り、「秋の峰」は山伏修行(8月26日―9月1日)、「冬の峰」は松例祭として受け継がれてきたが、「春の峰」は明治以前まで羽黒山内に28寺あったうちの格式の高い4寺の僧侶たちによって行われてきたことから神仏分離によって途絶えた。
冬の峰である松例祭で2人の松聖(山伏の最高位)が99日間にわたって祈りを込めた五穀のもみに稲霊(いなだま)をうつす儀式が春の峰とされる。稲霊をうつしたもみは御判立(ごはんだ)てといって、希望する檀家(だんか)の農家らに厄よけの護符「牛玉宝印(ごおうほういん)」に入れ、頒布される。牛玉宝印は各農家で種もみと一緒に祭られ、春になると稲霊が田全体に行き渡り豊かな恵みをもたらすように苗代の水口に立てられる。