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2018年(平成30年) 10月14日(日)付紙面より

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アスベストの悪性胸膜中皮腫 代謝の仕組み解明に迫る

 鶴岡市にある国立がん研究センター・鶴岡連携研究拠点「がんメタボロミクス研究室」の佐藤雄三研究補助員(35)=鶴岡市出身=らの研究グループが、悪性胸膜中皮腫について、代表的な治療薬がどのようにがん細胞の代謝産物に影響しているかを探った論文を発表した。治療薬が効く細胞と効きにくい細胞をメタボローム解析で調べ、がん細胞の代謝の仕組みの解明に迫る内容。研究成果は、治療が難しいとされる胸膜中皮腫の新しい治療法の開発につながることが期待される。論文は12日、スイスの薬学専門誌のオンライン版に発表された。

 希少がんの胸膜中皮腫は、アスベスト(石綿)を主因に肺を覆う胸膜に発生する。有効な治療法がなく、国内の患者数(死亡者数)は増加傾向にある。

 佐藤さんは、胸膜中皮腫の代表的な治療薬の代謝拮抗(きっこう)薬「ペメトレキセド」が、がん細胞の代謝産物にどのように影響しているかに着目。患者由来の3種類の胸膜中皮腫の細胞をメタボローム解析して代謝を調べ、治療薬に対する感受性を追跡した。その結果、薬が効く感受性の高い細胞では、核酸の合成に関連する一部の代謝産物が他の細胞より低下することが分かった。薬の効き目が小さい細胞ではこうした変化は見られなかった。さらに今回の発表では、治療薬の標的より下流にある経路の代謝産物がバイオマーカーや薬剤耐性に関連している可能性を見いだした。

 佐藤さんは同市川尻生まれ。鶴岡高専専攻科を経て山形大工学部の大学院に進み修士課程修了。その後、庄内地域産業振興センターで産学官連携推進コーディネーターを務め、世界最先端の慶應先端研のメタボローム解析技術に触れ、これを活用した研究を志向。昨年4月、同市に開設された鶴岡連携研究拠点の研究補助員となり、今回の研究に着手した。論文のタイトルは「悪性胸膜中皮腫における代謝産物の影響及びその評価」。

 慶大大学院政策メディア研究学科博士課程の社会人大学院生でもある佐藤さん。研究を始めて1年余りで、今回の論文の筆頭筆者になり、「提出した論文に対して厳しいコメントがあり、仕上げるのに苦労した。掲載され、研究者としての一歩をしるすことができたという思いが強い。研究を続けていきたい」と語った。

 鶴岡連携研究拠点は、地方創生に伴う国の機関の地方移転の一環で、同市に開設された。国立がん研究センターと慶應先端研、庄内地域産業振興センターとが連携し、がんの診断薬などの研究開発が進められている。今回が3機関共同での初の論文発表。佐藤さんが所属するチームの牧野嶋秀樹チームリーダーは「メタボローム解析を活用した新規性が評価された。ぜひ研究を継続し、将来の鶴岡・庄内のために活躍できる人材になってもらいたい。それが、鶴岡連携研究拠点の開設目的でもある地方創生につながる」と話した。

 慶應先端研の冨田勝所長は「昨年設立された国立がん研究センターの鶴岡拠点と慶應先端研の連携で、大きな研究成果を国際論文として初めて発表することができた。これからも世界最高峰のがん研究を共同で推し進めていきたい」とコメントした。

悪性胸膜中皮腫の代謝産物に関する論文を発表した佐藤さん=鶴岡連携研究拠点
悪性胸膜中皮腫の代謝産物に関する論文を発表した佐藤さん=鶴岡連携研究拠点


2018年(平成30年) 10月14日(日)付紙面より

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公益大生有志が企画した「SCOP遊佐」 海洋ごみテーマにワークショップ

 東北公益文科大学(酒田市)の学生有志が企画したワークショップ「SCOP遊佐」が13日、遊佐町内で開幕。14日(日)までの2日間、本県はもとより首都圏の大学から参加した学生計25人が海岸での漂着ごみ収集活動や座学研修などを通し、海岸漂着物対策について理解を深める。

 SCOPは、「Student Carry Out Project」の頭文字を取ったもので、学生自ら地域課題に気付き、学び、掘り下げていき解決策を模索していくプログラム。

 今回のワークショップは、呉尚浩公益大教授(公益学、環境社会学など)のゼミを履修している柴田雪乃さん(20)はじめ3年生3人が中心となり、本年度の「やまがた社会貢献基金」の日産プリンス山形販売(山形市、小関眞一社長)による「子どもから大人まで環境にやさしい社会づくり支援事業」の助成を受け、県と遊佐町、NPO法人・パートナーシップオフィス(西村修理事長)、美しいやまがたの海プラットフォーム(小谷卓議長)の協力で初めて実施した。

 柴田さんらは、酒田市飛島で今年9月1、2の両日に実施したクリーンアップ活動「いぐべ、飛島」に参加した全国各地の学生に対して声掛け。その結果、公益大から14人、本県の山形大、東北芸術工科大、首都圏の神奈川大、東京家政大、高崎経済大、フェリス女学院大、東洋大から11人の計25人が参加した。

 初日は最初、海底湧水が湧き出る同町吹浦の釜磯海岸でクリーンアップ活動。相次いだ台風の通過で、砂浜には漁網やビニールハウス用品といった漁業・農業系のごみ、河川上流部から流れ着いたとみられる生活用品、対岸からのプラスチック片、ペットボトルの空き容器などが散乱。秋の柔らかな日を浴びながら学生たちは約2時間にわたって拾い集めていた。

 午後からは公益大セミナーハウス(同町吹浦)に場所を移し、海洋ごみに関する座学と課題整理。夜はバーベキューで参加学生たちが交流。2日目は初日の課題を受け、解決策を模索した上で、対策をまとめる予定。柴田さんは「学生の活動は在学中の4年間で終わるのがほとんど。どう継続していくかを考えたとき、団体を組織するのが一番と思っており、今回のワークショップ開催をその第一歩にしたい」と話した。

公益大生らによる「SCOP遊佐」が開幕。釜磯海岸でごみを拾い集める参加学生たち=13日午前
公益大生らによる「SCOP遊佐」が開幕。釜磯海岸でごみを拾い集める参加学生たち=13日午前



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