2015年(平成27年) 7月14日(火)付紙面より
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「読書のまち 鶴岡」宣言をすすめる会(黒羽根洋司代表)主催の「読書で元気なまちをつくろう・市民の集い」が12日、鶴岡市中央公民館で開かれ、元鳥取県知事の片山善博さんが「読書環境と知の地域づくり」と題し講演。主催者側からの提案で、市議会に「読書のまち 鶴岡」宣言の制定に関する請願の採択を求める署名活動に取り組むことにした。
同会は2011年に発足。藩校教育の精神風土を受け継ぎながら、読書による豊かなまちづくりを進めようと、市民の集いや本紙荘内日報紙上でリレーエッセーなどを展開。今回の市民の集いは5回目。
片山さんは岡山市出身。東京大法学部卒業後、自治省に入省。能代税務署長、自治大臣秘書、鳥取県総務部長などを歴任。1999年から鳥取県知事を2期務め、図書館を知の拠点として知的自立を目指す画期的な政策を進めた。現在は慶應義塾大法学部教授。
この日は市民約400人が参加。片山さんはプライベートでは6人の子供を持つ父親で2005年にベスト・ファーザーイエローリボン賞を受賞したこともある子育て経験から、「子供一人一人に本を買ってあげるわけにもいかず、図書館には本当にお世話になった」と図書館との関わりを紹介。「身近な所にいい図書館があることは生活の質を高める」とした。
近年の大学で教える学生や政治家でも読書習慣がないといった現状に触れ、「読書は知識を得るだけでなく、読むというのは常に考える作業で思考力を高める。さらに著者との対話、読むという行為そのものが忍耐力を高める」と読書の効果を説明。「民主主義の合意形成には対話が必要であり、今の政治の質の低下はあまりにもひどい」と嘆いた。
また、鳥取で取り組んだ知的地域づくりについて、下請け体質の県民性から脱却する人づくりが目的だったと語り、少人数学級や県立高校も含めた学校司書の配置などを進めたことを紹介。隣接の島根県も同様の取り組みを進め、「生徒の読書習慣や生活習慣がまるで違うといった効果が見られる」と読書環境の整備が児童・生徒に明らかに変化をもたらすとした。
そして、「本屋のない町は無医村に近い。ハイカラでなくともちょっと不便でも地元の本屋から本を買うなどもっと地元を大切にするべき。ずっとしないできた結果が昨今の消滅可能性都市という言葉の登場。どういう自治体であってほしいのか、住民も議会もよく考えてほしい」と話した。
開会では、黒羽根代表が「地域で自分たちの文化をつくっていこう。知的都市鶴岡の始まりに」とあいさつ。講演後に主催者側からの提案で今年の市立図書館100周年を機会に「読書のまち 鶴岡」の宣言の制定に向けて趣旨に賛同する人の署名集めをスタートすることにし、その場で署名に協力してもらった。