2018年(平成30年) 1月1日(月)付紙面より
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公益大から「出藍之誉」を
荘内日報社社長
橋本 政之
東北公益文科大学は昨年末に公表された朝日新聞・河合塾共同調査「ひらく日本の大学」2017年調査で、社会科学系学部の「きめ細かさ得点」で満点を取り、地方の「小さな大学」の取り組みとして紹介された。▽課題解決型授業の実施▽グループによる学修・発表を取り入れた科目▽リポート・試験へのコメント返却―など10項目全てを満たした。
かつて庄内藩校・致道館では現代の高校、大学に当たる年代は自学自習を基本に小集団による討論「会業(かいぎょう)」を中心に、自分たちで課題を定め研修した成果を発表・討論し、疑問を明らかにして理解を深めた。公益大の「きめ細かさ」に通じる。
18歳人口が減少する中、定員割れから抜け出す大学改革を始動してから今春で7年目に入る。入学者は確実に増え続け、昨春は学部定員(235人)に達した。陣頭指揮を執る新田嘉一理事長は毎週月曜日午前、職員を前に訓示する。「今の時代、20歳前後の若者が千人規模で集まるものを、庄内に新たにつくれるだろうか」と語り掛け、公益大が地域に果たす役割を「産業を興し活躍する人材を育てたい。大学が地域にしっかり根差して存在し続けられれば、地域が寂れることはない」と繰り返す。
「庄内も地域が力を合わせ、『高次地方都市連合』を目指し、効果的なネットワークをつくり上げていくことが必要」。昨年3月、鶴岡商工会議所が開いた庄内の活性化を考えるシンポジウムで講演した国土交通省、森昌文技監のすすめだ。
国交省は2050年を見据えた国土づくりの理念「国土のグランドデザイン」で、人口減対策として都市が連携する「高次地方都市連合」の構築を盛り込んでいる。人口10万人以上の市を中心に一般道で車で60分以内を「都市圏」とし、そこの人口が30万人を割り込むと、大学やデパート、映画館、救命救急センターなど高度な都市機能の維持が難しくなる、としている。
2010年に人口30万人以上だった都市圏は全国で61(3大都市圏を除く)。県内では山形市と、鶴岡と酒田の2市が「連合」で1つとして数えられている。該当する都市圏は2050年には43に減る予測。既に30万人を割っている鶴岡・酒田連合は減る18都市圏の1つ。
都市機能としての私立大学が存在し続けられる人口規模をどう維持するか。都市圏の地域づくりを担う人材を大学がいかに輩出できるか。深く相関する。
昨年4月に86歳で逝去された英語学者、評論家の渡部昇一氏(鶴岡市出身)は4年前、酒田市で講演したとき、「戦後、日本の教育はここを教えてこなかった」とおなかを指し、「肚(はら)」の字を当てた。「肚をくくる、肚を決める」とは「覚悟をする」こと、「覚悟をする」とは「良いこと、悪いこと全てを受け入れて取り組む決意」だ。
今年は明治維新、戊辰戦争から150年。来年4月で「平成」が幕を引く。4年後には酒井家が庄内に入部してから400年。「庄内」はにわかにくくられた都市圏ではない。肚をくくり「庄内連合」のときではないか。2001年に公設民営で開学した公益大は、昨春までに2200人余の卒業生を輩出した。「出藍之誉(しゅつらんのほまれ)」を待ちたい。
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