2018年(平成30年) 8月16日(木)付紙面より
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農林水産省は14日、庄内町の北楯大堰が本県の施設では初めて「世界かんがい施設遺産」に登録されたと発表した。世界かんがい施設遺産は、建設から100年以上経過し、かんがい農業の発展に貢献したものや、卓越した技術により建設されたものなど、歴史的・技術的・社会的価値のあるかんがい施設を登録する制度。
現在、全国有数の米どころとして知られる立川・余目地域は、1600年ごろまで扇状地の平たんな地形ながら河川より標高が高かったため、水利用の悪い不毛の土地だった。江戸初期、山形城主・最上義光の家臣で狩川城主の北楯大学助利長(きただてだいがくのすけ・としなが)が10年にわたる新田開発調査の末、1612(慶長17)年に立谷沢川から水を引く農業用水路の開削工事に着手。最上川の急流や山裾の地滑りなどに阻まれるなど困難を極めたが、高精度の測量技術や綿密な設計、一日7400人の作業員の動員などによりわずか4カ月で約10キロの水路を完成させたと伝えられる。
その後も次々と水路の建設が進められた結果、約5000ヘクタールが開田し1669年には46の集落が新たに誕生するなど、農村形成に大きく貢献した。庄内平野の礎を築いた利長は、水の恩恵を受けた人々から功績をたたえられ、狩川城跡近くの北舘神社に水神として祭られた。水路は北楯大堰と名付けられ、現在も庄内平野の水田を潤している。
世界かんがい施設遺産は、アジアや欧州、アフリカ、アメリカなど世界77カ国・地域が加盟する「国際かんがい排水委員会」(ICID、本部・インド、ニューデリー)が認定・登録している。農地に水を供給する「かんがい」の歴史や発展を知り、施設の適切な保存が目的。2017年度までに世界10カ国の60施設(うち日本は31施設)が登録されている。今回、国内では新たに4施設が登録されており、北楯大堰の他は五郎兵衛用水(長野県佐久市)、大和川分水築留掛かり(大阪府柏原市、八尾市、東大阪市)、白川流域かんがい用水群(熊本県熊本市、菊陽町、大津町)の3施設。いずれもICID日本国内委員会の国内審査を経て、今月13日からカナダで開かれているICID国際執行理事会で登録が決まった。
北楯大堰の登録決定に吉村美栄子知事は「荒地を美田に変え、人々の暮らしを豊かにし、地域社会の形成と振興に大きな貢献があった北楯大堰が高い評価を得たことは大変喜ばしい。登録を契機に大堰の魅力を国内外に発信し、交流人口拡大や地域活性化につながるよう地元自治体や関係団体と連携して取り組みたい」、原田眞樹庄内町長は「基幹産業である農業、とりわけ400年以上前から米作りを中心に営みを続けてきた本町の歴史に新しい一ページが加えられた。また、これを機に、さらに立谷沢地区を中心とした治山・治水などの歴史を後世にしっかりと引き継いでいく努力をしていく」とそれぞれコメントした。
2018年(平成30年) 8月16日(木)付紙面より
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お盆を古里で過ごした帰省者のUターンラッシュが始まった。15日は空港やJRの各駅、高速バス乗り場では、家族を見送る多くの人たちの姿が見られた。
お盆期間のUターンのピークは庄内空港では14日から始まり、18日の赤川花火大会を挟んで20日までは終日ほぼ満席状態。JR羽越本線も同期間、昼前後の時間帯の上り特急列車や臨時列車の混雑が予想される。
JR鶴岡駅のホームでは15日午前、古里の土産を手にした家族連れなどがホームに列をつくり、見送りにきた祖父母や両親、親類らに手を振り、列車に乗り込む姿が見られた。
神奈川県茅ケ崎市へ帰る義理の妹夫婦をホームで見送った鶴岡市みどり町の渋谷優さん(60)は「きょうだいと子どもたちなど親類が集まり、母親の米寿のお祝いをした。義理の妹夫婦も来てくれて大勢で一緒に過ごした思い出深い夏になった」と話した。