2018年(平成30年) 12月11日(火)付紙面より
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庄内地方の高等教育・研究機関が連携した「知の拠点シンポジウム」が9日、鶴岡市先端研究産業支援センターで開かれた。基調講演や教員陣の発表、パネルディスカッションを通して庄内の地域づくりを考えた。
慶應義塾大先端生命科学研究所、東北公益文科大、山形大農学部、鶴岡工業高等専門学校の知を集結し、地域への貢献・活性化を図る「知の拠点庄内」ワークショップ委員会(村山秀樹委員長)が主催。8回目の今回は「歴史と自然に溢(あふ)れる庄内?これからのまちづくりを語る」をテーマに、山中大介さん(ヤマガタデザイン社長)と渡部玲士さん(坂茂建築設計)が「サイエンスパークから始まった街づくりの新潮流」の演題で基調講演。高谷時彦さん(東北公益文科大特任教授)が「歴史的建築を活用した地域まちづくり」、藤科智海さん(山形大農学部食農環境マネジメント学コース准教授)が「農業を生かしたまちづくり」、山田充昭さん(鶴岡高専基盤教育グループ准教授)が「庄内の魅力的な歴史的風致と観光?継承し、発信し、ともにいきる」の演題でそれぞれ発表した。
このうち、山田さんは庄内藩民衆の直訴や一揆によって撤回された「三方領地替え」に象徴される地域と人の結び付きや、藩校致道館の教育精神を閉校後も140年以上にわたり維持継承している地域の特性を紹介しながら、2013年度に鶴岡市が認定された「歴史的風致維持向上計画制度」について説明。「古いものを保存するのではなく、今のライフスタイルにうまくマッチングし、活用していく、観光も視野に入れた取り組み」と解説した。
県や鶴岡市のデータと学生へのアンケートを基に、「鶴岡市が県内の中で最も多く観光客を呼び込んでいる地域で、そのエースは名所・旧跡」「出身地の歴史に興味がある学生は半数以下。黒川能や松例祭を見たことがある学生はほとんどいない」などと紹介した。山田さんは「歴史的風致は観光振興のための資源。逆に観光振興は歴史的風致の維持向上につながる。効果的・効率的な情報発信やニーズにマッチした受け入れによって観光の注目度が高まれば、若者層が地域の魅力を見直し、地域活動の担い手増加につながる」とした上で、「この取り組みが持続するかどうかは、若年層を取り込むことができるかにかかっている」と説いた。
2018年(平成30年) 12月11日(火)付紙面より
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幕末の英雄・西郷隆盛(南洲、1827―77年)と庄内の関係にスポットを当てた「徳の交わり?西郷隆盛と庄内展」が酒田市役所1階西側のふれあいスペースで開かれ、地元出身のグラフィックデザイナーが制作したパネル10枚で、旧庄内藩士が西郷の言葉を「南洲翁遺訓」にまとめ全国に広めた経緯などを詳しく解説している。
展示は酒田市が主催した。NHKが西郷を主人公にした大河ドラマ「西郷どん」を放映していることや、同市飯森山二丁目に西郷を祭る南洲神社があり、同神社を管理している公益財団法人荘内南洲会が「遺訓」普及版増刷への寄付を募っていることなどから、市民への理解を広める狙い。
パネルを制作したのは、鶴岡市出身の廣嶋育子さん(43)=山形市在住。数年前に仕事の壁に突き当たり思い悩んでいた時、「南洲翁遺訓」の「敬天愛人」(天を敬い、人を愛する)などの思想に接し、救われたという。以来、西郷の思想や庄内との関係などを学ぶとともに、より多くの人に西郷のことを知ってほしいと、本業の技術を生かし、荘内南洲会発行のパンフレット制作などを手掛けてきた。
パネルは、これまで学んできたことをA2判の24枚にまとめたもの。今年3月に、西郷が船に乗ったなどゆかりの中山町、11月には戊辰戦争の激戦地・関川近くの鶴岡市越沢地区でそれぞれ展示した。今回はそのうち10枚を展示した。
パネルは、庄内藩校致道館では徂徠学を教え各人の個性を伸ばす教育をしていたことや、戊辰戦争で庄内藩が戦った経緯、西郷が寛大な戦後処置を指示したこと、それを知った藩主・酒井忠篤らが鹿児島に行き西郷に学んだこと、西南戦争後に中老・菅実秀が中心になって西郷の言葉を「遺訓」にまとめ全国に配ったことなどを、図や写真を多用し、分かりやすく解説した。いずれも廣嶋さんが地元の関係者に丹念に取材し、調べた成果という。
廣嶋さんは「先人は、自分たちを救ってくれた西郷さんに深い敬愛の念を抱いた。先人の思いが現代につながり、私たち一人一人の中に今も生きていることを感じてもらえたら」と話している。展示は14日まで。