2018年(平成30年) 3月13日(火)付紙面より
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東日本大震災から7年を迎えた11日、庄内各地で追悼行事が行われた。鶴岡市の鶴岡アートフォーラムでは記憶と教訓の風化を防ぐ「7年目のキャンドルナイト」が開催され、入り口には「絆」「希望の光」などとメッセージが託された手作りキャンドルで「つながる」などの文字がかたどられた。
キャンドルナイトは仙台市で被災した鶴岡市出身の女性がフェイスブックで発信したメッセージをきっかけに、震災翌年の2012年から「震災を風化させず被災者と思いを共有しよう」と呼び掛け、市民や山形大農学部の学生が実行委員会(代表・菊池俊一山大農学部准教授)を立ち上げて始まった。活動は酒田市にも広がり、13年から生涯学習施設「里仁館」が中心となり東北公益文科大の学生らが活動に加わって実施されている。
鶴岡会場
この日、鶴岡市のメーン会場となる鶴岡アートフォーラムでは日没後、市民参加のワークショップで制作された約2000個のキャンドルに点灯。午後7時からはアートフォーラム交流広場で「キャンドルの夕べ」が行われ、市民有志による踊りや合唱が披露された。家族で訪れた同市馬場町の横山明彦さん(45)は「母の実家が岩手にあり、思い出の景色は津波で流された。7年前のことを考えるいい機会になるし、子どもにも伝えたい」、妻の彩子さん(37)は「余震の中で長女を産んだことを思い出す。まだ終わっていない」と話していた。
キャンドルの夕べに先立ち、同会場では「追悼と防災の集い」も開かれ、地震発生の午後2時46分に黙とう。山大農学部4年の小野美乃里さん(22)が「キャンドルナイトの活動で学んだ人の温かさと日常のありがたみを忘れずに生活していきたい」と「7年目の思い」を語った。会場では防災グッズなどの展示も行われた。
酒田会場
酒田市の中心市街地で同日夜、市民手作りのキャンドル約1000個と、100個ほどの絵灯籠に火をともし、犠牲者の冥福と被災地の一日も早い復興を祈った。
いずれも同市の生涯学習施設「里仁館」(冨士直志館長)、中通り・中町中和会両商店街振興組合の主催。キャンドルは東北公益文科大や市内の高校で開催したワークショップの際、学生や生徒、市民が製作した。
キャンドルは市中町にぎわい健康プラザ前に並べられた。酒田詩の朗読会を主宰する阿蘇孝子さんの朗読、酒田マリーンジュニア合唱団による合唱に引き続き、約60人の参加者が見守る中、メーンキャンドルに点火。柔らかな炎が辺りを照らし出し、「3・11わすれないきぼう」「ガンバレとうほく!」の文字が浮かび上がった。
2018年(平成30年) 3月13日(火)付紙面より
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酒田市黒森地区に伝わる農民芸能「黒森歌舞伎」(県指定無形民俗文化財)で、来年2月に行われる正月公演の演目を決める「神撰(しんせん)の儀」が11日、黒森日枝神社で行われ、若手役者が引き寄せたくじで「ひらかな盛衰記」に決まった。
ご神体に代わり、身を清めた若者が翌年の演目を選び出す「神撰の儀」は、神事的芸能の要素を残す黒森歌舞伎独特の儀式で、芝居の奉納を受けた神社が役者らを招いて開く宴「太夫振舞」の前に行っている。
今年の撰者は、今年2月の正月公演にも出演した星川慶祐さん(29)=黒森、農業=で、1週間にわたって肉や酒などを絶ち、この日に備えたという。星川さんは神社でおはらいを受けた後、白い下ばき姿で社殿を出て境内の井戸で水ごり。手おけで7杯半の冷水を浴びて身を清め、再び神前に正座。竹の棒に付けたこよりで、一升ますの米の上に置かれた演目候補のくじ3枚から、神意で1枚を引き寄せた。
来年の演目「ひらかな盛衰記」は、平家物語を基に、木曽義仲の滅亡から一谷合戦に至るまで義仲の遺子を守る家来たちの苦心を描いたもの。「逆魯(ろ)の場」の最後の大立ち回りが見どころ。黒森歌舞伎一座「妻堂連中」の冨樫久一座長によると、正月公演としては2000年以来、19年ぶりという。冨樫座長は「来年には初の海外公演となるポーランド公演も控えている。高い評価を頂けるよう、まずは正月公演に向けて精いっぱい努力したい」と話した。