2019年(平成31年) 2月3日(日)付紙面より
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鶴岡市あつみ温泉の老舗旅館「萬国屋」が1日、上山市の旅館「古窯」(佐藤洋詩恵社長)に経営譲渡され、古窯傘下による新たな体制で経営が始まった。「萬国屋」の名称を引き継ぎ、パートを含む約150人の雇用も維持する。萬国屋は設備投資に伴う債務が負担となっていたが、主力銀行の荘内銀行は同日、再生支援を目的に債権21億7900万円を放棄したと発表した。萬国屋を運営する会社の新社長には古窯の佐藤太一専務(41)が就いた。
萬国屋は江戸時代の寛文年間(1661―72年)創業とされ、350年ほどの歴史を有する県内有数の歴史を持つ旅館。1994年に10階建ての新本館「楽山楽水」が完成し、現在の客室数は135室、793人収容。大型の設備投資に伴う債務が経営負担となり、創業家一族が退任して経営再建を進めていた。
将来を見据え県内外の企業と連携を模索する中で、同じ県内の古窯に絞って経営譲渡の調整に入っていた。全国的に知られる接客や経営手法など古窯のノウハウの提供を受け、収益力向上につなげる判断だった。古窯から社長に佐藤太一氏、副社長に荒井稔氏、専務に中川清昭氏の3人が就き、旧萬国屋の大滝春一氏は常務取締役に留任。古窯の買収額などは非公表。
萬国屋の新たな社長に就いた佐藤氏は荘内日報の取材に「全国的に知られる内陸と庄内の2大旅館の強みを生かし、県内の観光を盛り立てていきたい。管理部門や共同仕入れなど共通化できる部分も多い。萬国屋の豊富な湯量と恵まれた庄内の食に力を入れて誘客を図り、インバウンドや若年層の取り込みも視野に入れ、リブランディングしていきたい」と再建への意気込みを語った。地元と連携したあつみ温泉街のまちづくりにも積極的に加わる考えを示した。
古窯は1951(昭和26)年創業。2008年に山形市の「悠湯の里 ゆさ」を取得し、経営する旅館は上山市の「おやど 森の音」を含め3カ所あり、萬国屋は庄内で経営する初の施設となる。
一方、荘内銀行は萬国屋の債権放棄に伴う損失は引き当て済みで、今年3月期の業績予想に変更はないとしている。
2019年(平成31年) 2月3日(日)付紙面より
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鶴岡市黒川地区に伝わる「黒川能」(国指定重要無形民俗文化財)の最大の神事「王祇祭」が1、2の両日、地区の鎮守・春日神社などで行われ、神の依(よ)り代を下ろした上、下の当屋では500年以上の歴史を持つ黒川能が夜通し演じられた。
旧正月の神事で、春日神社から神の依り代「王祇様」を上、下両座の当屋に下ろし、それぞれ1日夕から2日明け方まで能楽で供応する。今年の当屋頭人は上座が渡部俊美さん(78)=屋号・仁兵衛、上の山、下座が秋山武彌さん(75)=同・四五右衛門、小在家=が務め、上座が黒川上区公民館、下座が同中区公民館で行われた。
このうち上座では、午後6時ごろから演能が始まった。地区の幼年の男児が演じる「大地踏」を釼持葉矢君(4)が務め、儀式能「式三番」に続いて、能の「絵馬」「船弁慶」、狂言の「末広」「柿山伏」など能5番、狂言4番が夜を徹して演じられた。
会場には当屋の親類や地区住民をはじめ、県内外の黒川能ファンが訪れ、一貫目ろうそくがともる中、連綿と受け継がれてきた神事能の世界を堪能。佐藤榮作会長ら首都圏櫛引会の役員6人で訪れた埼玉県入間市の高橋栄子さん(65)=東荒屋出身=は「櫛引出身者として、一生のうち一度はしっかりと見ておかなければならないと思っていた。ふるさとの誇りでもある王祇祭の黒川能を見ることができ、いい経験なった」と話していた。
2日は春日神社で、上座の能「絵馬」、下座の能「高砂」、両座立ち合いの「大地踏」、「式三番」の順に奉納された。