2019年(平成31年) 2月19日(火)付紙面より
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今年11月に酒田市の黒森歌舞伎(県指定無形民俗文化財)がポーランド公演するのを前に、駐日ポーランド大使のヤツィク・イズィドルチク氏が17日、同市黒森の日枝神社を訪れ、境内で奉納上演された同歌舞伎の正月公演を鑑賞した。イズィドルチク大使は「感動した。ポーランド公演は絶対に成功すると思う」と同歌舞伎が両国の絆として果たす役割への期待を述べた。
黒森歌舞伎は江戸中期の享保年間から約280年にわたり黒森地区で受け継がれている農民芸能。ポーランド公演は、同歌舞伎を調査したことがある同国の日本文化研究者イガ・ルトコフスカさんを通じ、ポーランド・日本国交樹立100周年の今年、日本文化を紹介する一環で、日本の約170の地芝居の代表として公演するよう要請を受けた。伝承組織の妻堂連中(冨樫久一座長)の約50人が市などの助成を受けて11月、同国を訪れ、ワルシャワとクラクフの両都市で公演する予定だ。
今回は、市と妻堂連中、黒森歌舞伎ポーランド公演実行委員会(実行委員長・冨樫座長)が16―18日の2泊3日の日程でイズィドルチク大使を招待。16日は土門拳記念館や相馬樓、玉簾の滝、17日は鶴岡市の加茂水族館などを見学した後、黒森・日枝神社で、参議院日本ポーランド友好議員連盟会長の中曽根弘文参院議員や丸山至市長と共に、妻堂連中の本狂言「ひらかな盛衰記」の1幕を鑑賞した。厳寒期に屋外で鑑賞するため「雪中芝居」とも呼ばれる黒森歌舞伎。防寒着に身を包んだ大使は、膝掛けや湯たんぽのサービスに喜びながら、興味深そうに見入った。
鑑賞後、イズィドルチク大使は本紙の取材に対し、「感動した。東京でも歌舞伎や能は見たことはあるが、こうして屋外で鑑賞したのは初めてで、とても印象深いものになった。ポーランドでは日本の文化に興味を持っている人がとても多く、黒森歌舞伎の公演は絶対に成功すると思う」と語った。
また、酒田市や庄内の印象については「自然に恵まれ、海や山もきれいで、美しい。玉簾の滝の雪景色にも感動した。加茂水族館のクラゲや土門拳記念館の展示もとても興味深く、クラゲや土門の写真の展示をポーランドで実現できたら素晴らしい。日本の地方都市と母国が交流するのは良いことで、こうした交流をさらに発展させていきたい」と語った。
大使は本狂言の幕あいに楽屋を訪れ、役者たちとも交流した。
2019年(平成31年) 2月19日(火)付紙面より
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鶴岡市と鶴岡食文化創造都市推進協議会が主催する「つるおか食文化フォーラム―伝えたい 鶴岡の食を」が16日、同市覚岸寺の市先端研究産業支援センターで開かれた。国内唯一のユネスコ食文化創造都市・鶴岡をフィールドに、食を学ぶ学生たちによる報告会や鶴岡の食をテーマにしたパネルディスカッションなどが行われ、「多様な教育機関や研究機関が集まり、日本型の新たな食文化を学ぶ教育フィールドが鶴岡でつくれる」などの提言があった。
同市は2016年12月、イタリア食科学大と戦略的連携に関する協定を締結したほか、辻調理師専門学校(本部・大阪)と17年5月に食の教育研究プロジェクト始動を視野に入れた包括連携協定を締結。また、昭和女子大(東京)の学生たちも16年度から継続して鶴岡でフィールドワークを展開するなど、国内外の食に関わる学生や専門家らが鶴岡を舞台に食や食文化を学んでいる。
フォーラムには市内外から約100人が参加。内閣官房「クールジャパン官民連携プラットフォーム」有識者委員で一般社団法人元気ジャパンの渡邉賢一ソーシャル・プロデューサーが基調講演し、「鶴岡を地名ではなく、食文化に関するモデルとしての呼び名になるようにして、『鶴岡をやりたい』といった形で広まるようにしていこう」と呼び掛けた。
渡邉さんを進行役に、小山伸二辻調理師専門学校メディアプロデューサー、志摩園子昭和女子大教授、イタリア食科学大のフィールドスタディプログラムを担当しているGEN・JAPANの三好曜子ディレクターがパネリストとなり、パネルディスカッション。「より多くの人々が関わる仕組みづくり、鶴岡の食と食文化を伝える橋渡し役の育成が必要」「日本の食を学ぶ素地が鶴岡にはある。鶴岡を食と食文化のミュージアムに磨き上げていきたい」などの声が上がった。
鶴岡で食文化の教育プログラムを体験した学生や担当者による報告があり、昭和女子大の学生たちは若者の視点から鶴岡の食文化をテーマにしたインバウンド(訪日外国人旅行)の可能性を発表し、辻調理師専門学校の学生は「生産者の思いと食材の生産の背景に触れ、料理人人生の宝となる貴重な体験ができた」と報告。GEN・JAPANの三好さんは「鶴岡で外国人向けに約70の食文化教育プログラムを実施してきた。鶴岡は学びに来る場所であるだけでなく、新たな食文化を生み出す価値がある」と述べた。