2024年(令和6年) 2月11日(日)付紙面より
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酒田市はじめ市内外の産学官4者が締結した「実データを用いた実践的データサイエンス教育に関する協定」に基づき、同市の東北公益文科大学(神田直弥学長)の学生たちが昨年、ホームセンター・チャンピオン(同市四ツ興野、高橋芳秋社長)の酒田店で取り組んだプロジェクト型応用演習「POSデータ分析で売場改善」の成果報告会が8日、学内で開かれ、学生たちが約4カ月に及んだ学びを発表した。
協定は昨年8月、市と公益大、チャンピオン、ビッグデータプラットフォームを運営する「True Data」(トゥルー・データ、東京都港区、米倉裕之社長)が締結。購買データ(ID―POS)、ビッグデータなど用いて公益大生が学びを深めるなど産学官連携による実践的教育の機会を創出することで、デジタル人材の育成を図るのが狙い。
今回の演習は、チャンピオン酒田店による購買データ、トゥルー・データの生活者ビッグデータを分析するとともに、同店を視察した上で、学生たちが年末商戦における「掃除用品」の売り上げ増に向けた「売り場づくり」を提案。実際に販売活動を繰り広げ、その効果を検証するもの。昨年10月3日に開講し、神田学長の指導で2、3年生計16人が取り組んだ。
同店への聞き取り調査を元に、学生たちはターゲットとして「同市平田地域在住の50―70代」と設定。扱うものとして掃除用品に加え、帰省する子や孫のための「ついで買い」を見込んだ菓子類、コンセントのプラグ部へのほこり付着によって引き起こる「トラッキング現象」防止を啓発するため火災予防グッズの3種を選定、正面出入り口近くの陳列棚を「施策棚」とし、昨年12月16日から大みそかまで設置。さらに販売促進に向け売り場紹介動画、商品POPも自ら制作した。
この日の報告会には、オンラインを含め学生と関係者約30人が参加。神田学長が経過を振り返った上で、「施策棚」設置前後、前年同期との売り上げ対比を紹介、「施策によって購入金額・個数とも増加。全体的に効果が見られた」と述べた。その後、学生たちが携わった商品ごと4チームに分かれてそれぞれ報告。「データを取って分析することの大切さ、過去のデータをしっかり見ることの必要性を感じた」「ターゲットを限定的にすることで意外と売れると知った」「売れやすい目線の考察、データの分析が面白かった」などと充実した学びを発表した。
学生の発表に聴き入った高橋社長は講評で「売り上げ増は皆さんの力。より良い売り場の提案を頂き感謝。以前は経験や勘で物を仕入れて売り場を構築していたが、今はそういう時代ではなく、しっかりしたデータ分析が必要」と述べた上で、「現在、必要な物を必要な人に必要な分だけで提供する店の設立準備を進めている。これからも市民一人一人に寄り添った店舗運営をしていきたい」と話した。