2024年(令和6年) 9月27日(金)付紙面より
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昨年夏の高温少雨の影響で過去最大級の松枯れとなった庄内砂丘の砂防林を中心に、松くい虫による被害木の伐採が本格化している。県は処理費用の予算を増額。例年12月から翌年の3月まで行われているが今年は3カ月前倒しして始まった。作業を進める北庄内森林組合の職員は「正直に言うと被害が多過ぎて作業が追い付かない状況」と苦慮している。
伐採は北庄内森林組合や出羽庄内森林組合、温海町森林組合のほか、民間の木材会社合わせて6社が中心となって進められる。あらかじめ被害を受けたクロマツにピンクのテープを巻いて目印を付け、道路沿いや家屋の近くにある被害木を優先的に伐採する。チェーンソーで幹を輪切りにしたり枝を払って処理。業者に運んでチップや木質ペレットに加工し、ストーブ燃料などに有効利用される。
作業担当者によると「被害木は昨年より今年の方が多い感じがする。マツの大小にもよるが、1日にこなせるのは10本から30本程度。一応、年度末までの工期だが(被害木の多さから)場合によっては来年の6月ごろまで続きそうだ」と話す。
酒田市浜中の県道鶴岡酒田線沿いにあるクロマツは約100メートル区間で30本近く茶色に枯れたケースも。直接、松くい虫の被害を受けたかは分からないが、毎年造園業者に頼んで剪定(せんてい)した民家庭園のクロマツでさえ枯れたところが数件見られる。庄内空港近くの庄内夕日の丘オートキャンプ場で作業に当たった北庄内森林組合の作業員は、3人態勢で倒れる方向の安全を確かめながらチェーンソーの音を響かせていた。
県庄内総合支庁によると庄内では1979(昭和54)年に松くい虫(マツノマダラカミキリとマツノザイセンチュウの総称)の被害が出始めた。2008年ごろに一時、下火となったが13年から再び増加に転じた。これまでの調査から前年の夏に高温少雨となると、翌年に被害木が急増する傾向が見られる。
マツノマダラカミキリが運び役となってクロマツの中にマツノザイセンチュウが入り、幹内を食い荒らして枯らすことが原因とみられていたが、最近の研究(森林総合研究所東北支所・盛岡市)ではザイセンチュウに対してクロマツ自体がアレルギー反応(防御反応)を暴走させてしまい、枯死することが有力視されている。被害の拡大を抑えようと県森林研究研修センターで松くい虫に強い「抵抗性クロマツ」の苗木を養成しているが、長い年月を必要とするため抜本的な対策には至っていない。伐採したところにはクロマツの苗ではなく広葉樹を植えることも検討されている。