2012年(平成24年) 7月21日(土)付紙面より
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鶴岡第四中学校3年の吉住陸君(15)が、鶴岡工業高等専門学校の外国人留学生が道路に落とした現金と預金通帳を拾って届けたとして19日、社団法人「小さな親切」運動本部(東京都)から表彰された。
吉住君は5月24日午後5時ごろ、下校途中に鶴岡市稲生地内の路上で、現金12万円と預金通帳を拾った。偶然、通り掛かった鶴四中の近藤直志校長に相談したところ、通帳に鶴岡高専の「鶴鳴寮」などの記載があったため、近藤校長の車に同乗し、高専に届けた。
持ち主はモンゴル出身で、今年4月から3カ年の予定で留学している電気電子工学科3年の男性(20)だった。教科書を買うために銀行から下ろした直後、ズボンの後ろポケットに入れ自転車をこいでいる途中、落としたらしい。全額が返ってきたという。
鶴岡高専学生課の泉川由紀さんによると、落としたお金は男性のほぼ全財産で、男性は真っ青になって警察に駆け込んだという。ほどなく全額が戻ってきたことに、とても感激し、その後、吉住くんに丁寧に感謝の手紙を書いたという。
この日は鶴岡「小さな親切」の会(会長・國井英夫荘内銀行頭取)を代表して同行の加藤將展理事が鶴岡四中を訪れ、吉住君に運動本部と鶴岡の会からの2枚の「実行章」を贈り、善行をたたえた。
吉住君は「お金を見たときはびっくりした。感謝の手紙はとてもうれしく、人助けは良いものだと思った」と話した。
この一件があった直後、鶴岡高専ではシンガポールの短期留学生が鶴岡市内の大型店で財布を落としたが、やはり中味がそのままで返ってきて「他国では考えられない」と感激したケースもあった。泉川さんは「吉住君ら地域の人たちの温かい心が、外国人に『日本はすごい』と思わせている」と“モラルパワー”への認識を新たにしている。
2012年(平成24年) 7月21日(土)付紙面より
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鶴岡市出身で、「算数教育のカリスマ」といわれる元筑波大付属小学校教諭、窪田騰(のぼる)さん(80)=東京都豊島区=が19、20の2日間、傘寿(80歳)記念の示範授業を鶴岡市内の3つの小学校で行った。約40年にわたり毎年のように古里を訪れ、「算数の面白さ」を伝える授業を地元の教師たちに示してきた。本年度で一つの区切りにしたいと考えている窪田さんは「算数は美しい」と、算数好きになるよう子供たちにエールを送っている。
窪田さんは1932年、満州生まれ。戦後は父の故郷・鶴岡に引き揚げ、鶴岡高(現鶴岡南高)、東京教育大(現筑波大)理学部数学科卒。東京都内の公立中学を経て、57年から同大付属小学校に勤務し、以来、94年3月に退職するまで算数教育とその研究に専念。文部省指導書作成や日本数学教育学会研究部幹事などを歴任、「算数好きになっちゃった」などを著した。
故郷との関わりは1970年ごろから84年ごろまで田川教育数学研究会の講演会講師といった形で招かれた。2000年からは鶴岡市教育研修所の事業でほぼ毎年のように招かれ、「大勢の先生が1カ所に集まり講演を聞く形では、自習になる子供たちがかわいそう」と、自ら各校に出向く形で示範授業を実施。近年はほぼ毎月1回、2、3校で授業を行い、同研修所事業としての授業は昨年度まで、541時間に上っている。
19日に藤島小学校(三浦洋介校長、児童339人)6年3組の23人に対して行った授業は558時間目。「同じ形」をテーマに、大きさが違う山形県の地図を使い、「鶴岡、新庄、米沢を結ぶ三角形で、大きさは変わっても、変わらずに残っているものを探して」と問い掛け。児童は「対応する角の大きさが同じ」など生き生きとした目で発見を楽しみながら「合同」や「相似」などを学んでいった。
今回は、19日に同校と朝暘五小で計4時間、20日に櫛引西小で4時間、合わせて8時間の授業を実施。これで市内の40小学校のうち36校で実施し、本年度に全校で実施する予定。
窪田さんは「通うのは結構大変だが、子供と授業が好きで、自分自身の刺激になること、そして、故郷への恩返しのつもりで頑張ってきた」という。
算数については「整然とした美しさがある。それを子供たちに伝えたい」とする。地元の若い教師については「大人にとっては当たり前のことも、子供たちは白紙の状態から学ぶ。そこが一番重要で、難しい。その点をよく自覚して頑張ってほしい」と話した。