2021年(令和3年) 7月14日(水)付紙面より
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鶴岡市羽黒町松ケ岡のワイン醸造所「PINO COLLINA(ピノ・コッリーナ)ファームガーデン&ワイナリー松ケ岡」で昨年初めて醸造したファーストビンテージワインの一部が熟成を終え、12日から販売を開始した。松ケ岡産のソービニオンブランとシャルドネの2種のブドウを原料にした「フルフル/白2020」、同市西荒屋産の「甲州」を原料にした「鶴岡甲州」の白2種で、関係者は「岩ガキや豚カツなど地元食材との相性を楽しんで」とアピールしている。
同市の農業生産法人「エルサンワイナリー松ケ岡」(社長・早坂剛エルサン会長)が、明治初期に旧庄内藩士が開墾した松ケ岡に開設した県内17番目のワイナリー。月山を臨む周辺のほ場約6ヘクタールに2017年から8種約8000本のワイン用ブドウを植え、昨秋から醸造を始めた。自然の力に逆らわない「ヴァン・ナチュール」(自然派ワイン)を掲げ、ブドウは減農薬で栽培。醸造時は搾った果汁や果実にストレスをかけないよう、滑り台など重力の力でタンクに収める「グラビティ・フロー・システム」を採用した。
川島旭ジェネラルマネージャーによると、甲州を調達した西荒屋地区は水はけが良く、約270年前からブドウを栽培してきた歴史を持つ。国産ワインで先行する山梨県の甲州がかなり品種改良されたのに対し、西荒屋のものはほとんど原種に近く、香りが豊かという。樹齢50―60年の木から、酸味を生かすため完熟前の緑色の段階で収穫し、ステンレスのタンクで約4カ月間、熟成させた。華やかな風味と長く続く余韻が特長で、岩ガキなど庄内産の魚介類によく合うという。
一方、フルフルは、ソービニオンブランは約4カ月間、フレンチオーク樽で熟成させた。ステンレス樽で熟成させたシャルドネと58対42の割合でブレンドした。内側を焼いたオーク樽の香りを含む繊細で爽やかな風味が特長で、生ハムやローストビーフ、豚カツなどの肉料理にも合うという。名前はフランス語で衣ずれの音を表す言葉。開墾で絹産業を興した松ケ岡の歴史を踏まえたという。
ラベルは、甲州は西荒屋と同じ櫛引地域の黒川能(国指定重要無形民俗文化財)にちなむ翁の面、フルフルは海に浮かぶヨットで爽やかさを強調した。ともに東北芸術工科大学長の中山ダイスケさんがデザインした。
ブドウの栽培から醸造まで全般に関わってきた早坂勝専務は「右も左も分からないところから始め、ブドウは手を掛ければ掛けるほど良いものになるなど、少しずつ学びながら来た。良いものができ、うれしい。今後もより良いものを作っていきたい」と話した。
価格は鶴岡甲州、フルフルとも1本750ミリリットル入り3080円(税込み)。鶴岡甲州は1500本、フルフルは700本を生産。ピノ・コッリーナとグランドエル・サン(東原町)で販売するほか、ピノ・コッリーナ内のレストランではグラスワインでも提供する。今後、市内のホテルなどにも置いてもらうよう働き掛ける。問い合わせはピノ・コッリーナ=電0235(26)7807=へ。赤ワインはまだ熟成中で、早ければ来春ごろにも発売予定。