2021年(令和3年) 10月10日(日)付紙面より
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県議会9月定例会最終日の8日、県が提案した元県商工労働部長で県企業振興公社理事長の平山雅之氏(62)=東根市=を副知事に起用する人事案を議会側は全会一致で同意した。これにより今年3月11日以降続いていた副知事の不在は解消されることになった。
県議会閉会後、吉村美栄子知事(70)は「副知事の人事案に同意してもらい、まずはほっとしている。県民の皆さんにもご心配を掛け申し訳なかったと思っている。約7カ月間不在だったので本当に大変だった。やっと正常化できると思っている」と述べ、安堵した表情を見せた。
平山氏は一橋大法学部卒。1983年に県職員となり、36年のキャリアのうちおよそ半分の23年は商工労働関連の業務に携わっている。2017年に商工労働部長に就任。19年に定年退職した後は県企業振興公社理事長を務めてきた。
商工労働部長時代を知る県職員は「仕事に厳しいが人格者。現場主義で、とにかく外に出ていろいろな人の話を聞いてくる。コロナ禍で苦しむ県内経済にも広く目を届かせてくれると思う」と期待を寄せる。県議会最大会派・自民党の県議からも「以前からよく知っている人物であり、知事にもずばずばと意見を言ってくれるものと期待する」といった声が聞かれた。
自民党県連の森谷仙一郎幹事長(天童市区)は「新しい副知事は経済、産業に精通していた方なので今後の県政運営に期待したい。副知事が決まったことに会派としても安堵している」と述べた。平山氏は県企業振興公社の理事長職を引き継いだ後、副知事に就任する予定だ。
新副知事を歓迎する声が挙がる一方で、前副知事の若松正俊氏(66)=寒河江市=について、吉村知事と自民党会派の溝は埋まっていない。
7カ月の副知事不在の発端となったのは今年3月の県議会2月定例会で、県議の過半数を占める自民党会派が反対に回り若松氏の副知事再任案が否決された。反対した理由は、今年1月の知事選で若松氏が県内の複数の首長に対し、「相手候補を支持しないでほしい」といった働き掛けをした疑惑があり、県政ナンバー2にふさわしくないと断じたためだ。
人事案が否決された翌日、吉村知事は若松氏を非常勤特別職の「コロナ克服・経済再生特命補佐」に任命した。当時、吉村知事は若松氏の県庁内や各市町村との総合調整力を挙げ「コロナ対応が厳しい状況下で副知事不在は避けたい」とし、新型コロナや県内経済など県政に対するアドバイザーの役割を任じた。
その後、吉村知事は若松氏を副知事に再任させたい考えを示していたが、これに自民党会派が猛反発。自民側との意見交換を踏まえ、9月上旬に吉村知事は別の人物を起用する意向を示唆した。
また、平山氏を副知事に据える人事案が提出された9月定例会中、吉村知事は「任命当時と状況が変わった。コロナの第6波も予想され、適切な助言をしてもらえる特命補佐と副知事は双方が必要」と述べ、平山氏が副知事就任後も特命補佐を残す意思を示した。
これに対し自民側は「副知事が決まったのなら特命補佐は解任すべき」との姿勢を変えていない。ある県議は「商工関連の業務に長く携わってきた平山氏は経済のスペシャリスト。若松氏は長く県職員を務めており確かに総合調整力はあると思うが、それだけだ。経済再生は平山氏に任せるべき」と強調した。
さらに県議会は8日の定例会最終日に「特命補佐の職務内容の公表等を求める決議」を議会に提出し、可決された。吉村知事は少なくとも本年度末まで若松氏を特命補佐として起用し続ける構えだが、今後は「若松氏が特命補佐として具体的にどのような助言をし、それがどのような成果に結び付いたのか」を県民や自民党会派へ説明し、特命補佐の“有為性”を明確に示す必要がありそうだ。