2024年(令和6年) 12月13日(金)付紙面より
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漁業者や飲食店関係者ら評価
ラーメン試作など検討進める
未利用魚のワニエソから魚だしを作り、活用につなげようと研究を行っている県水産研究所(鶴岡市加茂)は10日、漁業者や加工業者、飲食店関係者らを集めて同所で、だしの飲み比べなどを行った。後日、市内のラーメン店が試作したラーメンの試食会も行う。
近年、庄内浜ではスルメイカやハタハタ、マダラなど主力魚種の漁獲高が減少しており、同研究所ではこれまであまり利用されてこなかった魚種の利活用の検討を進めている。今回の試食会は、料理人と生産者との連携構築などに取り組んでいる合同会社Maternalの小野愛美さんが市内のラーメン店主からカタクチイワシの漁獲量が減り、だしの価格が上がり困っていることを聞き、庄内で取れる魚でだしが取れないか探っていたもの。ある研究発表会で、新潟からの参加者がワニエソについて話していたことから、庄内でも洋上廃棄されているワニエソを活用できないかとの依頼を受け、同研究所が試作を進めてきた。
ワニエソは主に相模灘や若狭湾から九州南岸の浅い海で見られる魚で、庄内浜でよく見られるようになったのは5―6年ほど前からという。今年4月から県漁協の販売データに追加され、11月までに586キロの販売量があるが、それ以外は「食べる文化がない」「小骨が多い」などの理由から洋上廃棄されており、正確な漁獲量は分かっていない。庄内ではなじみの薄い未利用魚だが、西日本では高級かまぼこの原料にもなっている。
試食会には由良や温海、吹浦などの漁業者やラーメン店、旅館、飲食店、加工業者、県漁協、県庄内総合支庁などから24人が参加。初めに、同じ塩分量や抽出方法で作り、名前を伏せた3種類のだし(香川県産のカタクチイワシ、ゆらまちっく戦略会議のチダイ焼き干し、ワニエソ焼き干し)の官能評価を行い、甘みやうま味、苦み、こくなどの6点をチェック。その後、同研究所主任専門研究員の高木牧子さんが「ワニエソ焼き干しの科学的評価」、研究員の五十嵐悠さんが「庄内浜におけるエソの漁獲実態」について講話した。
その中で高木さんは、ワニエソ焼き干しのだしは苦みを感じるヒスチジンの含有量が少なく、トビウオ焼き干しより遊離アミノ酸の含有量が多いことが分かり、甘みやうま味が強い特徴があることなどを紹介し、「料理に活用する際の参考にしてほしい」と話していた。
参加した飲食関係者からは「内臓を取らずにまるごと焼き干しにして、苦味が出るようにしたら」「竹の枝にすり身を付けてお客さんに焼いてもらう楽しみ方もある」「かまぼこだけでなくシューマイにも使いたい」などの感想が出された。
17日には第2部として同市羽黒町黒瀬のラーメン店「中華そば 琴(こん)の」で、ワニエソ焼き干しを使ったラーメンの試食会を予定しており、主に今回の参加者が出席する。