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「早田孟宗」えぐみなく深い味わい

2006年2月にスタートしたこのコーナーも100回を迎えた。読者の皆さま、快く取材に応じてくれた生産者に深く感謝したい。

節目を飾る素材は、この時期には欠かすことができない孟宗だ。鶴岡市の道の駅あつみ「しゃりん」の紹介で、旧温海町の名産地・早田地区を訪ねた。

「孟宗の産地を九州まで回ってみたけど、やっぱり鮮度が大切。魚と一緒です。味はそんなに変わりはないと思いますよ」。早田孟宗生産者の会代表を務める佐藤橘弥さんから意外な言葉が飛び出した。

話を聞くうちにその理由が分かってきた。「掘り終わった後と9月末から10月初め、そして雪が消えた直後の3回肥料をやります。収穫前には下刈りも欠かせません」。竹林を掘るだけでなく、愛情を込めて管理する。そんな条件を満たしているところなら、採れる孟宗に大差はないらしい。

佐藤さんの孟宗に付いている土には粘りけがあった。これもおいしさの秘密かも

県内を代表する名産地の湯田川地区では先月29日に集荷と直売が始まった。早田地区もそのころが初出荷と思ったが、「地区の神社の祭りがある4月18日に毎年、地物を食べています。今年ももちろんお膳に出ました」と聞いてびっくりした。

佐藤さんの竹林は、海岸から1キロほど東に入ったところにあった。「雪が少ないからでしょう」と早く出る理由を説明するが、南向き斜面というのも影響しているのかもしれない。

おいしい孟宗を掘ってくれるというので、名人の後について急斜面を登った。運動不足の身にはなかなかきつい。目を凝らすと、地表からわずかに顔をのぞかせる孟宗が見える。「あそこに出ていますよ」と声をかけると「あれはだめ」。そんなやり取りが何度か続いた後、名人を納得させる孟宗がようやく見つかった。

「穂先が黄色いのがおいしいと思います。それっ」と孟宗掘り専用のくわを振り上げる。掘り出した孟宗を上から見ると、まん丸でなく、だ円のように細長い。これを平(ひら)孟宗と呼ぶそうだ。「平孟宗の方が味がいいと言われています」。

「先日、湯田川の旅館から『こっちはまだ出ていないが、山形から客が来るので孟宗持ってきて』と頼まれたので置いてきました」。佐藤さんの孟宗は「本場」にも高く評価されているのだ。

佐藤さんのおすすめレシピは香り汁。「孟宗汁だとシイタケの香りが移る。余分なものを入れず、みそと酒かすで味をつけ、タケノコを入れて旬の香りを楽しんでください」。

帰宅後、さっそく試してみた。すがすがしいという表現が適当か分からないが、タケノコ本来の香りと味がよく分かる。「煮込む」という固定観念を捨て去ることも必要だと感じた。でも、掘りたてでないと味わうのが難しいかもしれない。佐藤さんの孟宗はえぐみがなく、味が深く、うまみがあり、とてもおいしい。

「私は農協経由で市場に出荷しています。ほかの生産者がしゃりんに出しているので、ぜひ早田孟宗を味わってください」と申し訳なさそうに話した。

佐藤さんのおすすめレシピ

孟宗の香り汁

○材料

孟宗、みそ、酒かす

○作り方

  1. お湯を沸かしてだしを取り、みそと酒かすで味を付ける。
  2. 孟宗の皮をむき、薄くスライスする。
  3. 1に2を入れて5分ほど煮れば出来あがり。

2008年5月3日付紙面掲載

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