今回も夏野菜を取り上げる。「もう地物が出たの」とびっくりする人もいるのではないか。ネバネバ系で食欲を増進させ、栄養価の面でも申し分ない。暑い日の食卓を彩るオクラだ。
酒田市の食彩工房「いちご畑」にハウス栽培の早出しオクラがあると聞き、生産者の佐藤恵理さん=坂野辺新田=を訪ねた。いちご畑では夫の博さんの名前で販売している。「露地栽培だと、7月にならないと収穫できないのでハウスに切り替え、今年で3年になります。早い時期から食べたいという人が多いみたいですね」。
6月初旬に収穫が始まり、「朝採りを袋に入れて、すぐにいちご畑に持って行く」から新鮮そのもの。40袋前後を連日完売という人気商品だ。実は取材前に3回、いちご畑に足を運んだが、売り切れていた。やっとオクラに対面できると、喜び勇んでハウスに入った。
「茎に付いているプツプツにさわらないようにしてください。かゆくなりますよ」。佐藤さんに言われ、思わずたじろいだ。「汗と反応するみたい。素手で取ってひどい目にあいました。今はゴム手袋が欠かせません」と笑う。
オクラの葉はイチジクに似ている。午後の訪問だったので黄色い花はしぼんでいた。「朝に来てもらえば、きれいに咲いたところを見てもらえたんですが」と残念そうだ。前回のズッキーニと同じで見るからに南方系だ。思ったことを口に出すと、「アフリカが原産地だそうですよ」。やはりそうだったかと納得した。
国内はもちろん、最近は海外産オクラも出回っているが、やはり新鮮な地物がいい。「鮮度はやはり大切です。一日たつと切り口が黒くなるので分かりますよ」。買う際は切り口にも注目だ。
ゆでてあえ物や天ぷらなどオクラにはいろんな食べ方がある。佐藤さんが教えてくれたのが旬を迎えたスルメイカの刺し身とのあえ物。ゆでたオクラを刻んで、イカ刺しとだしじょうゆをからめる。「ご飯はもちろん、ビールのつまみにもいいです」。ああ、のどがなる。「納豆ともよく合いますよ」。それもいい。
オクラは人間の背をはるかに超える高さまで成長するそうだ。「茎は3メートルぐらいまで伸びる。主人はいいけど私は大変。倒しながら取ることになります」と苦笑する。
帰宅後、いただいたオクラをゆがいてきざみ、しょうゆをかけて食べてみた。取れたてだから甘みがあり味が濃い。イカ刺しがなかったので、トビウオの刺し身とあえてみたが、これもなかなかいける。ビールが進む。家族はネバネバ同士が合体したオクラ納豆。「おいしい」と言いながら、ご飯をかき込んでいた。
以前、別の農家に聞いた食べ方も紹介しておく。さっとゆがいたオクラを一本そのまま冷えたしょうゆ味のだしにしばらく浸し、かつお節をかける。「料亭で出す料理です。堅くなるので、その日取れたものしかだめですよ」と、その念を押された。以来、わが家でも毎年一度はこの料理を作っている。
「露地物より長く収穫できるのも魅力」と話す佐藤さんのオクラは1袋9本前後入って140円。酒田市坂野辺新田のいちご畑=電0234(41)0283=で10月まで販売している。
オクラ、イカの刺し身、だしじょうゆ
つまみでもいいし、温かいご飯に載せてもおいしい。
2008年6月21日付紙面掲載