昨年、鶴岡市田麦俣地区に伝わる「なんど大根」という隠れた名産を取材し、紙面で紹介した。そろそろ大根がおいしい季節だと思い、産直あさひ・グーに問い合わせたところ、「なんど大根はありませんが、隣の地区の大網大根ならあります。なんど大根に負けず劣らずおいしいですよ」という答えが返ってきた。今回は大網大根を取り上げる。
「甘みがあり、軟らかい。それが大網大根の特徴です。煮物にすると最高ですよ」。産直あさひ・グーで大網大根を販売している今野太一さん=大網=が誇らしげに話す。大網大根というのは品種名ではない。なんど大根と同様、種は普通の青首大根なのに、成長するとほかの大根とは違う味わいなのだそうだ。
「大網地区は、大根によく合う土壌なのだと思います。特別な育て方をしているわけではないのに味がいい。高原野菜はおいしいとよく言いますが、標高が高い大網地区も『高原』です。ここで採れるジャガイモもおいしいですよ」と胸を張った。なんど大根を取材した際、民宿のおかみさんが同じことを言っていたのを思い出した。土と高原がおいしい野菜をはぐくむのだろう。
天候のせいか、今年は大根が例年以上に大ぶりなのだという。「ビニールの袋に入りきらないので、そのまま出荷しています」と苦笑いした。味の方はというと、「大根は雪をかぶると甘みが増します。先日の初雪でさらに味がよくなりました」と出来の良さに太鼓判を押す。
食べ方は煮物やふろふき大根など大根そのものを味わうのが良さそうだ。「ふろふきにしてネギみそで食べると本当においしい。棒だらと一緒に煮て食べると最高です。なますに使うのもいいですよ」と教えてくれた。
帰宅後、棒だらがなかったので、おでんに入れてみた。普通の青首大根より火が通るのが早いようだ。口に入れると、繊維質が感じられず軟らかい。しかも、甘みもあってとてもおいしい。普段は大根をあまり食べない子どもたちもはしを伸ばしていたので、よほどおいしかったのだろう。次回はふろふき大根をじっくり味わってみたい。
今野さんの大網大根は1本80~90円。根雪に覆われるまで鶴岡市下名川の産直あさひ・グー=電0235(58)1455=で販売している。
大網大根1本、棒だら150グラム、酒20㏄、砂糖50グラム、しょうゆ40㏄
2009年11月14日付紙面掲載