このシリーズでは過去にいろんなナスを紹介してきた。長ナス、丸ナスをはじめ、皮が白いナスなど読者が「えっ」と驚くようなものもあったと思う。今回取り上げるのは皮が緑色というナスだ。
「うまいナスなんですが、初めて見た人はびっくりするのか、あまり売れないんです」。鶴岡市の百万石の里「しゃきっと」で長緑(ちょうりょく)ナスを販売している田中重孝さん=下川=が苦笑いする。
長緑ナスは名前の通り、緑色をした長ナスだ。緑色といっても白が結構強い黄緑で、夕顔の色をイメージしてもらうのがいいかもしれない。「昨年までは普通の紫色のナスを販売していましたが、珍しい方がいいかなと思って、今年はこのナスを植えてみました」と切り替えた理由を話す。
黄緑色は皮の部分だけ。中は普通の長ナスと同じ色だ。「皮をむけば紫色のナスと一緒だから意味がない。だから皮も食べてほしい」といたずらっぽく笑った。味については「軟らかくて甘みがあります。アク抜きはした方がいいかもしれませんが、水に漬けても普通のナスほどアクは出ません」
「どんな料理法が合いますか」。愚問かと思ったが聞いてみた。「天ぷらにすると軟らかくてジューシーです。焼きナスはもちろん、油との相性も抜群です。何に使ってもOK。普通のナスと同じように料理してください」と予想通りの答えが返ってきた。
チューリップで有名ないこいの村庄内に程近い砂丘地の畑に連れていってもらった。「写真に撮るならこの辺がいいでしょう。メロンの収穫で忙しかったのでほったらかしにしてあります」と話しながら、ナスの実を覆い尽くすように広がった葉を取り除いてくれた。実に張りがあって元気いっぱい。「小さな夕顔」という感じだ。「実が成長するに従って、緑色が薄くなるようです」
頂いた長緑ナスを素揚げにしてみた。皮が軟らかくて実は甘く、とろりとした味わいが楽しめる。いため物もおいしかった。皮付きだとナスらしくない色なので、意外性も楽しめる。売り場では逆にそれがマイナスイメージになっているのかもしれない。焼きナスやゆでナスにしてもよさそうだ。
「紫のナスより安くして、お得感を出してみました」と田中さんが話す長緑ナスは500グラム入って1袋150円。見た目は「びっくり」だが、味の方はナス好きを満足させてくれるはずだ。鶴岡市覚岸寺のしゃきっと=電0235(29)9963=で10月まで販売している。
2010年8月18日付紙面掲載