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「コダイ」と「タイコ」

読者の方から「藤沢周平さんの小説に、武士がコダイを食べる場面が出てきますが、当時の武士にとって気軽に口にできる魚だったのでしょうか」という質問をいただきました。江戸時代のことは、魚のことであっても私にはよく分かりません。質問の答えにはならないかもしれませんが、 今回はコダイとタイコについてお話してみようと思います。

皆さんは、コダイとはマダイの子供と理解していると思いますが、コダイはチダイ、またはチコダイと呼ばれている魚の子供で、マダイの子はタイコです。コダイは成長しても、40cmぐらいにしかなりません。コダイとタイコは姿形がよく似ていますが、よく見るとタイコは体型が横に長くて尾ビレの内側が黒く、コダイの方はえらの縁が赤いので、そこに注目すれば、一般の人でも見分けがつくと思います。また、コダイは光沢のある赤ですが、タイコは光沢がなく、鮮度のよいものは真っ赤なので、買う際の参考になるでしょう。

コダイとタイコはよく似ています。タイコ(左)の方が横に長い感じです

この2つの魚は、市場では「赤物」と呼ばれています。外観は似ていても旬の時期は全く逆で、タイコは冬、コダイは夏がおいしいのです。春と秋はどうかというと、5月はコダイ、11月はタイコというように、旬に近いほうがおいしいと思ってください。

料理法は、コダイは焼き物が主体で、昔はおめでたい席には欠かせない魚でした。品薄の時期にはクチボソより高価なこともありましたが、今はコダイもタイコも価格が下がり、庶民的な魚になりました。コダイは身質が柔らかく、タイコは身が締まっているので焼いてから時間がたつと堅くなります。タイコは年末の贈答用に粕漬けにしてよく使われてきました。

旬の時期のコダイの塩ふり焼きは脂が乗って、身がパサパサしていません。本当においしいので、ぜひ食べてほしいと思います。クチボソにも言えることですが、鶴岡では「皿付け用」と呼び、お皿に収まるぐらいのサイズが珍重され、それ以上大きいと下品と思われるようです。新潟や秋田はもっと大きいものを好むようですが、これは調理法の違いが関係していると思います。

以前、地元の旅館で中華風にして身とスープを一緒に味わう料理が出てきたことがありました。とてもおいしかったです。コンソメなどの固形スープを使って、白髪ネギを添えてみるのはいかがでしょうか。簡単ですが、タイ系統はとてもいいだしが出るので合うと思います。

底引き網漁でハタハタが上がってきました。能登沖では大漁だそうです。天候が順調なら9月末から10月にかけて、お求めやすい価格になると思います。前回、このコーナーでハタハタの刺身を取り上げましたが、市場に出入りしている魚屋さんがさっそく試してみたら「すごくおいしかった」と言っていました。どのぐらいの鮮度まで刺身が可能なのかなど、課題はありますが、新しい食べ方として今後、注目されるかもしれませんね。サンマだって以前は刺身では食べていませんでしたから。

アンコウも捕れ始めてきましたが、こちらではほとんど消費されないので他県に出荷されています。キモはまだ小さいです。身がゼラチン質で体にもよく、おいしい魚です。

家庭ではさばくのが難しいというのも普及していない要因でしょうが、タラ汁のように大勢で食べるようになればいいのになと思います。10月はアマエビが上がってくると思います。

(鶴岡水産物地方卸売市場手塚商店専務・手塚太一)
2005年9月24日付紙面掲載

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