文字サイズ変更



  • プリント用表示
  • 通常画面表示

寒ダラ汁は鮮度が「命」

「庄内で冬の魚と言えばタラですが、タラやブリなど有名なもの以外で冬場、特においしい魚を教えてください」という質問を読者の方からいただきました。

冬においしい魚は多いのですが、庄内で獲れるものではヒラメ、ダイバガレイ(ムシガレイ)、ヤリイカ、メイカ、アンコウなどが代表でしょうか。ほかにサバ、ノロ(ノロゲンゲ)、カスベ、タコ、クロエビなどがあります。

注目したいのがタコで、近年はシャブシャブなど生食の需要が高まり、人気、価格とも右肩上がりです。冬場のタコは身が厚く、締まっています。生でも煮てもおいしいので多少価格が高くとも、ぜひ食べてほしいと思います。由良から秋田県金浦にかけて冬に獲れるのがクロエビです。独特の風味があり、天ぷらにするとおいしいので試してみてください。

ヒラメは目方で値段が変わる魚です。1kg未満と1kg以上、2kg以上に分けると、1kg未満と以上ではキロ当たり1,000円ほど違います。もちろん大きい方が高いのです。2kg以上はさらに500円上がります。ヒラメはあっさりした魚というイメージがあると思いますが、2kgを超えると味も別の領域になると思ってください。脂が乗りますし、エンガワもたくさん取れます。料理屋やすし屋さんは2kg以上のものを求めるようです。

昨年末から2週間以上、底引き漁船が出漁できない日が続き、地物の話題は少ないのですが、定置網は何度か出ています。スズキが多く揚がり、価格も安くなっています。3、4kgと大きく、普通の箱に入りきらないほどです。こちらでドコと呼ぶクロソイもけっこう獲れています。

庄内の冬に欠かせないのが寒ダラです。今年は豊漁が期待されています

今回のメーンはやはりタラです。寒鱈(かんだら)まつりが目前になり、鶴岡の市場にも緊張感が漂ってきました。タラに関する問い合わせも増えています。庄内沖にはここ数年、かなりの数のタラがいるはずですが、悪天候で底引き漁船が出られないのが残念です。波が高く、風が強いからです。

タラは、12月ぐらいから各地で揚がり始めました。出だしのタラの価格を決める産地は大消費地の一つである金沢です。プライスリーダーと言いますが、1月になると鶴岡がバトンを引き継ぎます。

タラ汁は一般に、海に近い方がシンプルで、町場に来ると酒かすや豆腐、ネギなどを入れるようです。料理屋さんではだしを取るところもあります。ちなみにわが家では、どんがらとみそ、酒を入れ、上に岩のりを乗せるだけです。昔、加茂に漁船を持っていたころの名残なのかもしれません。寒ダラ汁の味付け、具の種類は各家庭で違うので、どれが一番とは言えません。ただ、鮮度が味に表れるのは確かです。その意味では、漁船の上で食べるのが最高ですが実現できる人は限られますね。

タラにはいろんな料理法があり、「食の都親善大使」でもある奥田政行シェフは、サラダやスープ、グラタンなどにも使うようです。タラの白子を鶴岡でタツ、酒田でダダミと呼びます。全国的には近年、白子を天ぷらにする傾向があるようです。サクっと揚げて半生の状態で食べるとおいしいです。

寒ダラ汁にするには雄より雌がうまいとも言われています。どんがら汁に欠かせないアブラワタ(肝臓)が、雌の方が多く入っていることが影響しているのかもしれません。スープの味にこだわる人には、汁には雌を使って別のタラの白子を持ってくる人もいるそうです。岩のりも手摘みがやはりおいしいです。

寒鱈まつりに地物が出れば盛り上がると思いますが、今は地浜でなくとも鮮度がよく、おいしいタラが入ってきます。地物を安く買うなら、天気のよい日の翌日が狙い目です。波の高さが2m以下だと、底引き船も出漁し、かなりの水揚げが見込めると思います。お客さんも瞬時の判断が求められますね。最寄りの魚屋さんに「安くなったら教えて」と頼んでおくのもいいでしょう。

1匹丸ごと買って、いろんな料理に使うのが、タラを安く、おいしく食べるコツです。ご近所や家族同士で1匹を買い、楽しむのもよいでしょう。町内会や職場、サークルなどの酒飲みの口実にもタラ汁会が使われてきました。庄内の冬の食文化という枠を超えた深いものがそこにあると思うのですがいかがでしょうか。

(鶴岡水産物地方卸売市場手塚商店専務・手塚太一)
2006年1月11日付紙面掲載

トップページへ前のページへもどる
ページの先頭へ

Loading news. please wait...

株式会社 荘内日報社   本社:〒997-0035 山形県鶴岡市馬場町8-29  (私書箱専用〒997-8691) TEL 0235-22-1480
System construction by S-Field