読者から「夏によく食べる海藻にエゲシがあります。磯の風味が好きですが、あまり長持ちしないようです。上手な保存法を教えてください」という質問をいただきました。
この辺ではイゲシ、エゲシなどと読んでいますが、標準和名はイギスです。北は千島からカラフト、北海道、南は九州までと広い範囲で採れている海藻です。平安時代の中期に編さんされ、967年に施行された延喜式にも「伊祇須」として載っているそうです。日本では古くから親しまれてきた食べ物と言えるでしょう。
庄内ではイギスと言えば、みそ汁でしょう。ナスを入れてもおいしいですね。夏を代表する味覚だと思います。でも所変われば料理法も変わります。山陰や瀬戸内ではイギスコンニャク、イギス豆腐があり、お盆には欠かせない料理だそうです。
九州ではイギスを煮てから冷やして固めたものがあり、酢みそなどとあえて食べるそうです。想像するに、こちらで言うエゴみたいなものかもしれません。私からの提案ですが、庄内のコンニャク屋さん、豆腐屋さんでも作ってみてはいかがでしょうか。
イギスには赤っぽいものと緑色っぽいものの2つのタイプがあります。緑の方が軟らかく、みそ汁に入れてすぐに軟らかくなるのはこちらです。イギスは普通に冷蔵庫に入れておくとべしょっとなってしまいます。
保存法ですが、2、3日でしたら、ナイロン袋に入れて空気が入らないようにしておけば大丈夫だと思います。ラップを使ってもいいでしょう。よい状態を保つための温度は10~15度ぐらいでしょうか。長時間、常温にしておくと劣化が早まります。1週間ぐらい置きたいという場合には、多めの塩をまぶして塩蔵するのがいいと思います。戻す時は水で洗ってください。冷凍保存も大丈夫です。
庄内浜で今、旬を迎えている水産物にクルマエビがあります。せっかくの機会なので、お盆に帰省したらぜひ食べたい、と思っている方もいるかもしれません。
クルマエビは刺し網漁で捕ります。ところが、今年は水揚げが少ないのです。不漁は、価格にも反映され、小さいものでも値が上がっています。高級食材がさらに高価になっているのです。もちろん、輸入の冷凍物ならあります。でも、新鮮な地物のクルマエビの味は格別です。
私見ですが、クルマエビ漁の不振は、資源の枯渇が原因ではないと思っています。今後も徐々に漁獲量が減少するようだと困ったことになるな、と心配しているところです。
(鶴岡水産物地方卸売市場手塚商店社長・手塚太一)
2008年8月8日付紙面掲載