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身締まり脂乗る川マス

読者から「新聞の市況欄に川マスが載っています。サクラマスのことだと思いますが、海のマスより値段が高いのはなぜですか。産卵のために川に上るなら、身も痩せておいしくないのではないかと思いますがどうでしょう。スーパーで体長30センチ程度のマスが本マスとして売られていますが、サクラマスですか、それともカラフトマスですか」という質問をいただきました。

まず川マスについてお話しします。これまでも何度か触れましたが、サクラマスはもともと、ヤマメという魚です。川に残るとヤマメ、海に降りるとサクラマスになります。淡水から海水に移る過程でヤマメの体から斑点が取れて全身が銀色に変わります。そしてサクラマスと呼ばれるようになるのです。

サクラマスもサケと同じように産卵のため川に戻ります。サケの場合は百パーセント、生まれた川に帰ってくるのですが、サクラマスはそうとは限りません。産卵期に海水から淡水に入ったサクラマスを川マスと呼ぶのだそうです。しかし、海に降りる時のように魚自体に大きな変化が起きるわけではありません。伝聞の表現になったのは、鶴岡の市場では普通のサクラマスと川マスを区別しないからです。川マスとは酒田、飽海地区の表現で、サクラマスの中で川マスを特に珍重しているということでした。

サクラマスは今の時期も揚がっています

サケの場合、川に上ると鼻が曲がったり、とがったりします。サクラマスは、劇的な変化はありませんが、逆に鼻が丸くなり、体も丸みを帯びます。市場でマスの品定めする時、丸みがあるマスを丸マス、逆に外見が平べったいマスを板マスと呼んだりします。酒田の市場では川マスの方が高値で取り引きされ、極端な時にはサクラマスより1キロ当たり1000円も高いことがあるそうです。

一方、鶴岡の市場では両者の価格の違いはありませんし、区別そのものもしていません。酒田の業界の人には「鶴岡の人間は川マスのうまさが分からないから値段も違わないんだ」と言われました。酒田では最上川河口から少し上流に行った酒田市の新堀、落野目で捕れた川マスが最高とされるそうです。なぜ、川マスがおいしいかというと、新堀、落野目あたりでほどよく身が締まり、脂の乗りも最高になるとのことでした。鶴岡では由良の定置網にかかったサクラマスが高値で取り引きされ、地物と呼ばれます。より岸に近いところで捕れたものほど高く評価されます。

おいしいサクラマスの見分け方ですが、市場では身を切って脂の乗りを確かめることはできないので、おなかを触ってみます。お医者さんの触診みたいなものです。腹が厚く、そして硬いものが、脂が乗ってうまいと言われています。腹の軟らかいものは蛇腹と言って敬遠されます。三枚におろした時に腹の骨が浮き上がってしまうことがよくあるのです。蛇腹のサクラマスは、脂が乗っている部分を切り落とさなければならなくなることもあります。厚い腹とは、腹の側面の中央部にくぼみがないものと思ってください。くぼみがあるとやせている可能性が高いのです。

酒田では素焼きのマスにゆでたニラを添える「ニラ鱒」という食べ方が定番のようです。鶴岡では付け合わせは大根おろしでしょう。マスのあんかけなら、酒田はうどんを使い、鶴岡はそうめんにゆで卵の輪切りが主流でしょう。同じ庄内でもマスの評価法、食べ方に違いがあるということですね。でも、サクラマスが春の祭りに欠かせない魚という点は一致しているようです。

本マスの表記についての質問がありましたが、本マスと書いてあれば、体長が30センチほどでも間違いなくサクラマスです。カラフトマスは青マスと表示されることもあります。表記で見る場合、本マスはサクラマス、青マスはカラフトマスと思ってください。

(鶴岡水産物地方卸売市場手塚商店社長・手塚太一)
2009年6月25日付紙面掲載

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