読者から「クリノキハという焼きガレイのおいしさに驚きました。クリノキハについて教えてください。養殖もされていますか? 評価はどうですか」と、旧温海町出身で横浜市在住の方から「こちらで買うカレイは水っぽくておいしくありません。鮮度の問題でしょうか。庄内で昔食べたイワシはおいしかったのに、こちらで食べるイワシは後味が悪いです」という2つの質問を頂きました。
これまでに何度か紹介しましたが、クリノキハとは鶴岡の呼び名で、標準和名はヤナギムシガレイです。鶴岡では、クチボソに次いで珍重されている焼きガレイです。11月とその前後においしい時期を迎えます。カレイの中では最も値が張る高級魚です。
魚の養殖は、たくさん食べられている魚や、高級、または一般的に好まれている魚が対象になります。カレイの仲間では、ヒラメや松川ガレイで養殖が行われています。ヒラメは流通量も全国的な需要も多いため、養殖されるようになりました。松川ガレイは高値で取引されるので、北海道などで養殖が行われています。
クリノキハに話を戻すと、庄内以外では新潟の人がよく食べるそうです。マガレイやマコガレイのような知名度はなく、水揚げ量もカレイとしては少ない方でしょう。鶴岡では年間を通して高値で取引されるので、需要の方が供給より強いと言えます。
クチボソは6月から10月、クリノキハは9月から12月がおいしい時期に当たります。個人的にはクチボソは素焼きが一番おいしいと思います。クリノキハは、ダイバガレイと同じように塩を振ってしばらくおいてから焼くのがいいと思います。
横浜の方から頂いた質問に対する答えですが、鮮度よりも旬が関係していると思います。旬を外れると脂が抜けて水っぽくなるのです。塩を振って時間をおくと、水っぽさはある程度抜けると思います。首都圏ではカレイは子持ちの方の評価が高いようです。庄内では、ダイバやアワフキは別にして、子が入っているカレイは嫌われます。卵を抱いたカレイの身の味はいまいちのはずです。
質問をくれた方は、庄内にいたころに食べたイワシの味を覚えているようです。旧温海町の鼠ケ関一帯で昔、イワシの流し網漁が盛んでした。庄内の春のイワシは、子を持っていてとてもおいしかったのです。質問者は温海町の出身ですから、鮮度の良いイワシを食べていたのでしょう。今でもたまに捕れるので、ぜひ新鮮な「地物」を召し上がってほしいと思います。
(鶴岡水産物地方卸売市場手塚商店社長・手塚太一)
2009年9月26日付紙面掲載