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名前の由来は婚姻色。サクラマス編(上)

読者から「前回、シメサバの作り方が書いてありましたが、アニサキスという寄生虫が心配です。一度冷凍するとよいと聞いたことがあります。本当でしょうか。イカを刺し身にする際、皮の中にある固まりが動いているような気がすることがあります。食べても害はないでしょうか。エビのおすしの尾に、菌がついていないかも心配です」という質問をちょうだいしました。

アニサキスはいろんな魚に寄生しています。おっしゃるように冷凍したり、加熱することによって滅菌することは可能です。そうすることでより安全に召し上がることはできますが、味が落ちることも避けられません。どんな滅菌対策を講じても、空気中にはいろんな菌がいますから、保存状態が悪ければ元の木阿弥です。適切な処理を施した後は保存状態にも気を遣う必要がありますね。

アニサキスは確かにイカにも付いていますが、食べれば必ず中毒症を起こすというわけではありません。実は私も社内の人と同じものを食べてあたってしまったという経験をしました。ほかの人は何ともありませんでした。お医者さんには体調が悪かったからだと言われました。食べ物にあたるかどうかは人にもよるし、体調次第という面もあるでしょう。

エビのおすしについてですが、冷凍エビを解凍したものなら、それほど心配する必要がないでしょう。水で洗えば、菌は落ちるでしょうが、同時に味も落ちます。滅菌すれば、風味に大きく影響するということも覚えていてください。

今回は山形県の魚でもあるサクラマスを取り上げたいと思います。庄内でマスと呼ぶ魚にはサクラマスとサツキマスがあります。主に流通しているのはご存じの通りサクラマスの方です。サクラマスは川で生まれ、海に下っていきます。そして産卵のためサケのように川を上るのです。

酒田市の赤川河口はサクラマス釣りのメッカです。春の訪れとともに大勢の太公望が繰り出します

サクラマスの卵から生まれた魚はヤマメです。ヤマメの体にある斑点状の模様はパーマークと呼ばれます。成長して川を下る途中でパーマークが取れると、体全体が銀色になります。これをスモルト化(銀化)すると言います。こうなることで海水でも生きていけるのです。そして海を回遊し、産卵期に川に戻りますが、サクラマスの場合、生まれた川に帰るサケと違って母なる川への回帰性は低いのです。

一方、川に残ったヤマメは、サクラマスの陸封型とか河川残留型と呼ばれます。海に行くことを降海と言いますが、サクラマスとなって川に戻ってくるのはメスが多いのです。南の方だとヤマメのまま残るものが多く、北海道では大半が降海するそうです。

サクラマスという名前は、産卵期の魚体の婚姻色が明るい桜色になることに由来します。サケの場合は体の婚姻色は「ブナ」と呼ばれています。栄養価の面からサクラマスとヤマメを比較しますと、サクラマスの「脂肪率」はヤマメの2倍です。サクラマスの方が脂がよく乗っているということを意味します。逆にカルシウムは5倍以上、ヤマメの方が多いのです。身に限れば、ヤマメはカルシウムをかなり含んだ魚と言えます。マスは、細胞の老化防止、ガンの予防によいとされています。

余談ですが、サツキマスを酒田では川マスと呼びます。アマゴという魚の陸封型です。次回は、おいしいサクラマスの選び方についてお教えしたいと思います。

(鶴岡水産物地方卸売市場手塚商店専務・手塚太一)
2006年4月29日付紙面掲載

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