読者から「新サンマや新物のサケがスーパーの店頭にもう並んでいます。以前は秋になってから出たと思うのですが、こんなに早く捕れるのでしょうか。それとも旬が早まっているのでしょうか」という質問をいただきました。
旬が早まっているわけではありません。どちらもお盆のころから捕れているのです。サケの今年の水揚げは、例年より少し遅いと言われているぐらいです。スーパーはどこも季節を先取りする形で品物を売っています。寒ダラの季節の前に「寒ダラ」と名が付いていることもありますね。洋服についても同じことが言えます。夏物、秋物も季節が来るずっと前から販売しています。
庄内浜では9月の初めからサケ定置網漁というサケ専門の漁が始まります。今はいろんな魚を対象にした「混獲(こんかく)」の時期なので、捕れる日と捕れない日がありますが、9月になれば毎日水揚げされるようになります。サケ定置網漁は、サケの通り道に1度入ったら出られなくなる罠のような網を仕掛ける漁です。この漁は、岸に近いところに魚が来ないとできません。
サケの相場についてお話ししますと、昨シーズンは統計を取り始めてから歴代3位という豊漁に恵まれましたが、価格は下がりませんでした。理由は輸出にあります。中国を中心にサケの身が輸出されていますが、大きな需要であるために価格が高くなったのです。今年はどうかというと、まだ出方がはっきりしません。ただ、国内需要だけで価格が形成される状況でないことだけは確かです。
サケは身と卵(腹子、ハララゴ、イクラ)が商品になります。卵は国内限定の需要です。すし屋さんでは年間を通じてイクラが食べられるよう味付けして冷凍しています。その需要が価格にも大きく影響します。ただ、価格の高低は、大きな単位で扱う私たちの取引段階では大きいのですが、皆さんのところに届く時はそれほどではないはずです。サンマにも言えることですが、サケはイワシのように突然わいたり、捕れなくなったりするような魚ではありません。今年もおいしくて新鮮なものが食卓に届くことだけは確かです。ぜひサケの味を楽しんでほしいと思います。今は太平洋側で捕れたものがほとんどです。
サケは高血圧を予防するカリウムのほか、細胞の酸化を抑制し、血管をしなやかに保つ若返りのビタミンと言われるビタミンEを豊富に含み、高齢の方にも適した食材です。動脈硬化の進行を遅くし、脳卒中や心臓病を予防する働きをします。
サケは最近、加工品としても注目されています。新巻鮭や粕漬けは一般的ですが、意外なことに骨も食べられる水煮の缶詰がカルシウムを含んでいて人気があります。サンマについては次回取り上げます。
(鶴岡水産物地方卸売市場手塚商店専務・手塚太一)
2006年8月30日付紙面掲載