2006年2月から5年間続いてきたシリーズも最終回を迎えた。197回という長期間続くとは書いた本人もびっくりである。最後を飾る素材は、一足早く春の訪れを告げる促成栽培のウルイだ。
「前年の春に収穫を終えたウルイを株分けし、秋に畑から掘り出して休眠させます。それからハウスに移して加温、成長したところで出荷します。今年はやっと収穫期を迎えることができました」。鶴岡市の百万石の里「しゃきっと」でウルイを販売している太田愛さん=馬町=が笑顔で迎えてくれた。
早速、自宅敷地内にあるハウスに連れて行ってもらった。シートを外すと、高さ20センチほどに敷き詰められたもみ殻から黄緑色のウルイが顔をのぞかせている。最上地方の「雪ウルイ」は全体が白い。庄内では穂先が黄緑色になるのを待って収穫する。緑と白のコントラストが美しく、目も楽しませてくれる。
ウルイは手がかかる野菜だそうだ。「ハウス内の株の入れ替えは重労働だし、畑での草取りも3、4回する必要があります。枝豆の収穫期と重なる時期にはてんやわんやの忙しさ。年を取ると作業が大変です」と苦笑いした。
春に出てくる自生のウルイは緑色が濃く、見た目も荒々しいが、ハウス物は繊細で外観も上品な感じがする。それぞれに持ち味があり、個人的には生食も可能な栽培ウルイが好きだ。
「うちではゆでてかつお節としょうゆ、ごまドレッシングなどをかけて簡単に食べています。天ぷらもおいしいですよ」。太田家ではシンプルなウルイ料理を楽しんでいる。太田さんがしゃきっとの売り場に置いている「ウルイのレシピ」には、おひたし、みそ汁、サラダ、即席漬け、酢みそあえなども紹介されている。おすすめレシピは、しゃきっとレシピ班によるシメジとのサラダ。シメジとニンジンも店内で調達できるので便利だ。
帰宅後、頂いたウルイをさっとゆで、ショウガじょうゆで食べてみた。ごまドレも好きだが、わが家では「初物」のウルイはしょうゆで味わうことにしている。しゃきりとした食感が心地よく、体内の血液が洗われるような感じがする。これぞ「春の味」だろう。
しゃきっとのレシピにあったいため物も作ってみた。下ゆでしたウルイをしょうゆでいため、最後に酒かすを入れて混ぜ合わせるという料理だ。香気が強いウドは、かす漬けにするとおいしいが、ウルイと酒かすもマッチしていると思った。春の香りと酒かすの相性がいいからだろう。こちらもぜひ試してほしい。
太田さんのウルイは100グラム入って130~180円。太い方の値が高いそうだが、「味は同じ。使い勝手の良い方を選んでください」とのこと。鶴岡市覚岸寺のしゃきっと=電0235(29)9963=で3月末まで販売している。4月に入ると自生のウルイが店頭に並ぶ。
A(ウルイ100グラム、シメジ100グラム、ニンジン30グラム、リンゴ1/2個)、
B(酢大さじ2、しょうゆ小さじ2、ごま油大さじ2、砂糖大さじ1・5、塩小さじ1/2)
2011年2月11日付紙面掲載