「発見した人が大喜びをして舞い上がった」などマイタケの名前の由来には諸説あるらしい。いずれにせよその「実力」がうかがえる。今回は、鶴岡市の産直あさひグーで珍しい白いマイタケを販売している大瀧弘雄さん=上田沢=を訪ねた。キノコ栽培歴50年を誇る名人だ。
「白は数が少ないので、売り切れたときは勘弁してください」。自宅を訪ねると、大瀧さんが申し訳なさそうに話した。白マイタケは1区画で栽培しているだけ。「福岡の八百屋に全部欲しいと言われましたが、新聞に出るのでとお断りしました。白は珍しいのでしょうね」と笑う。大瀧家では普通のマイタケを「黒」、白マイタケを「白」と呼んで区別している。
車で栽培地に連れて行ってもらった。集落から10分ほどのところなのに、四方を山に囲まれ、方角が分からない。「天然のマイタケが育つ自然環境に近づけて栽培しています。スーパーで1年中売っているものとは味と香りが全然違います」と胸を張った。
長方形の黒や緑色のシートが見える。「春にマイタケの菌床のブロックを伏せ込み、その上に広葉樹を敷き詰めます。翌年の秋から3年間ぐらい、収穫できるのです」。シートの色が違うのは、光の加減を調節し、収穫時期が集中するのを避けるためだそうだ。
「取材に来てくれるので採らないで待っていました」。大瀧さんがシートを開いた。待望の白マイタケとのご対面。当たり前だが、本当に白いのに驚いた。純白に近い。ひだひだのような感じで表現するのが難しい。「サンゴのようだという人もいますね」。なるほどそれだ、とガッテンし、土から顔を出した「白いサンゴ」に見とれてしまった。
「採ってみませんか」と誘われ、顔を近づけるとマイタケ独特の香りが鼻に飛び込んできた。とても香りが強い。通年販売しているマイタケとは別物だ。持ち上げると簡単に採れた。意外に重い。
味と香りは白も黒も変わらないそうだ。「白だと汚れを見つけやすいので、調理するときに便利。煮炊きしても色が落ちないから、料理がきれいに仕上がります。料金は白の方が1割ぐらい高くなります」。
煮物や天ぷら、すき焼き、変わりご飯などマイタケはいろんな料理に使える。「肉と相性がいいので、肉類とのホイル焼きもいい。山菜料理の店で、牛肉で巻いて煮しめにするのが一番と聞きました」。思わずつばを飲み込んでしまった。
大瀧さんのおすすめレシピはみそ漬け。「茎の部分が特においしい。酒のつまみに最高ですよ」。
おいしいマイタケは、色ではなく茎で見るのだそうだ。「茎が厚いものを選んでください。それと、葉が完全に開いたのは全盛期を過ぎてしまったもの。八分ぐらいのがおいしいですよ」とポイントを教えてくれた。
帰宅後、いただいた黒マイタケでさっそくみそ漬けを作ってみた。「世の酒飲みたちよ、これを食べてみろ」と思わず叫び、一人で舞い上がってしまった。食べ比べると、茎の方が香りも味も凝縮されているようで確かにおいしい。予算の関係で牛肉は断念、豚肉で作った煮しめ、ホイル焼きもよかった。肉とマイタケは「出会い物」かもしれない。
「タイムリーな時期に収穫できるので、天然物にも負けません。塩蔵保存もききます」と話す大瀧さんの白マイタケは「旬の味」のラベルが目印。1キロ当たり2000円。鶴岡市下名川の産直あさひグー=電0235(58)1455=には妻の澄さんの名前で出荷し、10月上旬まで販売している。
舞茸、みそ、めんつゆ
2008年9月27日付紙面掲載