最初に見た時はヒョウタンかと思った。ふと手に取ってみて驚いた。張り紙に「バターナット」と書いてあった。色は肌色、形はヒョウタン。この野菜をどう料理するのだろう。好奇心がむくむくと頭をもたげてきた。
「ここでは珍しいものじゃないと、なかなか買ってもらえなくて」。遊佐町の月光川ダム上流の「さんゆう」でバターナットを販売している板倉裕子さん=臂曲=が苦笑いした。遊佐町の市街地から車で20分以上かかるさんゆうには、わき水をくみに来たついでに立ち寄る人も多い。
さんゆうの生産者はいろんな種類のカボチャを作っている。「ほらっ、これなんかおもしろいでしょう」。板倉さんが、赤茶色のでこぼこした形の野菜を指さした。京野菜の鹿ケ谷カボチャだそうだ。
バターナットに目を向けると、色はマネキン人形を思わせる肌色だ。「切るとこんな色なの」。縦半分に切断したバターナットの切り口を見て息をのんだ。
中は鮮やかなオレンジ色で皮の色と何ともアンバランス。「種と綿は下の方にしか入ってないんです」。確かにヒョウタンの下半分の「部屋」に種と綿が見える。このカボチャは食べる前にいろいろと楽しませてくれる。「もちろん、畑では横になっています。土に面したところに傷が付くので、成長したら立ててあげるんですよ」。
さて調理法だ。カボチャと言えば、揚げ物や煮物が思い浮かぶ。「バターナットは、甘みが少ない代わりにしっとり感があります。名前の通り、バターとよく合います」と意外な答えが返ってきた。
「忙しいのでレンジで加熱してきました」。
オリーブオイルと塩コショウ、マーガリンと塩コショウの2種類の料理を出してくれた。
オレンジ色がとてもきれいだ。口に入れると確かにカボチャという感じがしない。うまく表現できないが、サツマイモに近い味わいかもしれない。女性が好みそうな味だ。
「私はいためてそのまま食べるのが好き。でも、一番のおすすめは好みの厚さに切って塩で下味を付け、ポテトチップのように揚げたもの。シナモンかグラニュー糖をふって食べてください」。カロテンたっぷりのバターナットを子どもにたくさん食べさせるにはいいかもしれない。
おすすめレシピはバターナットのスープ。「ミキサーでやるのが面倒なら、ゆでたり、チンしてつぶしてもいいと思いますよ」。
帰宅後、いただいたバターナットを油で揚げてチップを作ってみた。温度が高すぎたせいか、ちょっとペタッとなったが、子どもたちは喜んで食べた。作り置きもきき、おなかをすかせて帰ってきた時のおやつに重宝しそうだ。
鶏のもも肉でスープを作り、バターナットを入れてみた。カボチャ特有の甘みに欠けるので、板倉さんのアドバイスに従い、スプーンでつぶしてみると、スープの味に広がりが出た。
「シチューやクリームチャウダーに入れると彩りもいいですよ」と板倉さんは推奨する。バターナットはサイズにより1個150~250円。遊佐町吉出のさんゆう=電0234(72)4500=で販売している。
バターナット1/2(500グラム)、ジャガイモ1個、タマネギ小さめ1個、スープストック2カップ、バター大さじ1、塩、コショウ少々
好みで牛乳や生クリームを入れる。スープストックも好みの物で。
2008年11月2日付紙面掲載