子どものころ冬になると、ギンナンの殻をペンチで割り、火鉢やストーブであぶって食べた。こんな思い出を編集局内で話したら、「おれもやった」「おれは焼いてから金づちでたたいた」という声が返ってきた。いずれも40以上のおやじ世代。アラフォー未満のスタッフは素知らぬ顔で仕事をしている。火鉢や煮炊きができるストーブが家庭から姿を消し、ギンナンは懐かしの味となってしまったのだろうか…。
「庭のギンナンをおすそ分け程度に出しているのだろう」と考えながら、遊佐町の道の駅「ふらっと」で販売している佐藤満子さん=直世=を訪問。「栽培しているんです」と言われ驚いた。「洋ナシが病気にやられ、それに代わる作物として15年ほど前に苗木を買って始めました」。佐藤さんが当時を振り返る。
「植えた人が死んでからでないと実がならないと、在来のギンナンは言われてきました。今は改良品種があるので数年で採れます」。ほったらかしでも実はできるものだと思ったら「果樹なのでたい肥をやります」と聞いてまた驚いた。
収穫作業について尋ねると「拾ったギンナンを大きなビニール袋に入れて足でつぶし、それを川で洗い、さらに専用の洗濯機で洗います」。手間がかかるものだと、ギンナンに対する認識を改めた。
最後に待っているのが天日干し作業。「秋なら3日、今は1週間かかります」。作業場でゴザに載せたギンナンを見せてもらった。乾ききっていないものは「果肉」のオレンジ色が残っている。手で混ぜると独特のにおいが鼻に飛び込んできた。
「うちでは毎日食べています」という佐藤さん。ストーブで焼くのは大変だろうと思ったら、電子レンジで熱を通すことができるのだとか。封筒ギンナンというレシピ名の通り、殻に割れ目を入れ、後は封筒と「チン」だけでいいというのだから簡単この上ない。
殻を取った生のギンナンの皮をはがす方法も教えてもらった。ひたひたのお湯に塩を入れ、2分ほどゆでながらおたまで軽くこすっていくのだそうだ。
「ゆでて冷凍しておけば秋まで持つから便利ですよ」と、ビニール袋に入ったギンナンを見せてくれた。「茶碗蒸しやいため物、煮物、おでんにも使えます。夜尿によいし、体が温まります」と話すように「薬効」も期待できそうだ。
帰宅後、さっそく封筒ギンナンを試した。久しぶりにペンチで殻を割ったため、力が入りすぎて最初はつぶしてしまった。コツをつかめば簡単。「バンバン」という音が聞こえたところでレンジから取り出す。塩をまぶして食べると、懐かしい味がする。
鍋でゆでると、意外に簡単に皮が向けるのでおもしろい。きれいにゆであがった緑色のギンナンを八宝菜に入れた。中華料理店に行ったような豪華さが漂う。次回は子どもたちからリクエストされた茶碗蒸し、くしに刺しておでんにも入れようと思った。
ギンナンは、食べ過ぎると中毒になることがあるので注意が必要。「子どもは年の数まで」と言うらしいが、佐藤家では小さい子は3個までだ。
佐藤さんのギンナンは、大粒の改良品種は残りわずかで200グラム250円、小粒の在来種は250グラム200円。遊佐町菅里のふらっと=電0234(71)7222=で販売している。
ギンナン、封筒、塩
たくさんのギンナンがはじける音が気にならなければ、割れ目は入れなくともよい。
2009年2月28日付紙面掲載