香気好きに今の時期、欠かせない野菜と言えばフキではないか。「三川町マイデルの会長が出しているそうです。どうでしょうか」。県庄内総合支庁農業技術普及課からの誘いで、芳賀修一さん=を訪ねると、「自分は出荷しているだけ。栽培者で料理もできる母親に任せます」とかわされ、和子さんに話を聞いた。
「20年以上前に知人に根っこをもらい、早生ブキを植えました。以前から生えていた水ブキがその勢いに負け、今は早生ブキが幅をきかせています」と笑った。マイデルに出しているのは早生ブキだ。
山などに自生している野ブキに比べ、早生ブキは穴が大きく、くせが少ないのだそうだ。「特に手をかけることはしません。もちろん無農薬です。『持っていってもいいよ』と言っているので、近所の人も採っていきます」。地区住民も認めるおいしいフキのようだ。
フキを食べるのは好きだが、下処理に手間がかかりそうでこれまで敬遠していた。いい機会だと思い、聞いてみると、「熱湯に塩をひとつまみ入れ、5分ほどゆでたら水に取ります。皮をむいて1時間ぐらい水にさらせばアクが抜けます」。案外簡単そうだ。
あく抜きしてしまえば、フキはいろんな料理に使える。芳賀家では油いためやおすすめレシピの身欠きニシンとの炊き合わせ、甘露煮などいろんなバリエーションで食卓に上る。
おもしろそうだと思ったのが「最近、作っていない」というかす漬け。「砂糖を合わせた酒かすを容器に敷き、ガーゼを載せてその上に塩でもんだフキを置き、またガーゼをかぶせる。これを二段重ねぐらいにしてください」。好みでみそを入れてもいいのだとか。
帰宅後、フキのアク抜きを初体験。長過ぎて鍋に入らなかったので、真ん中で切って二等分した。5分ほどゆでて水に取る。「軟らか過ぎる、失敗だ」と頭をかいたが、料理に使ってみるとちょうど良いあんばいに仕上がっていた。
油揚げ(薄揚げ)とのいため物はサクサクと歯触りがよく、適度な香気がとてもいい。下ゆでしてあった孟宗とフキをたっぷりのだし汁でそれぞれ煮て、ワカメを入れた炊き合わせも作ってみた。孟宗とフキの相性は抜群。ワカメも含め、春から初夏にかけての「出合い物」と言っていいかもしれない。
何よりフキの食感がすばらしい。「これくらいのお弁当箱に…」で始まる歌の最後に「筋の通ったフキ」という歌詞が出てくるが、「これがその味わいか」と感心してしまった。今度は芳賀家の「幻の味」になったかす漬けにもぜひ挑戦したい。
近所の人も採りに来る芳賀家のフキは8~10本入って1束150円。三川町横山の物産館「マイデル」=電0235(68)2500=で販売している。
フキ、身欠きニシン、酒、しょうゆ、砂糖
調味料は好みで加減する。煮る際に梅干しを半個入れると臭みが取れ、フキも軟らかくなる。タカノツメを加えてもよい。
2009年5月16日付紙面掲載