山菜シーズンも終盤にさしかかり、「ワラビはもう食べ飽きた」という人もいるかもしれない。「そろそろ硬くなってきたからいい」と思う人でも今回、取り上げるワラビはぜひ食べてほしい。山に生えている自生のものと、肥料をたっぷり与えたワラビとは味わいがまた違うからだ。
「今年は妻が体調を崩してしまった。料理方法についてはちょっと勘弁してください」。庄内町の風車市場でワラビを販売している阿良(あろう)武さん=狩川=が開口一番、おすすめレシピの断りを申し出た。
「ワラビはあく抜きしてショウガじょうゆで食べるのが一番。構いませんよ」と取材を続行。とは言いながら、「たたきもいいし、コンニャク、ニンジンなどほかの野菜といためるのもおいしいです。塩蔵もしますが、わたしはやり方が分からなくて…」。思ったより料理法は広いのかもしれない。
頂き物や店頭のワラビを見ると、色の違いに気付くことがある。「青、紫、緑色の3系統に大別されるようです。この辺に自生しているのは青系が多く、わたしのもそうです。関東と関西では色の好みも違うと聞いています」と解説してくれた。
山に生えているワラビは自然環境が育てたものだ。一方、阿良さんは転作田で「根」を増やして有機肥料をたっぷり与える。だから6月の中旬に入っても茎が硬くならないのだろう。
収穫期が長いのも阿良さんのワラビの特徴だ。「山より早くて4月20日すぎから取り始めました。これからドッと出てきます。1日休むと、グッと伸びますよ。今年は1人の作業なので、なかなか収穫が追いつかなくて」と苦笑いする。
自宅そばのワラビ畑に連れて行ってもらった。頭の部分が開きかけたワラビが目に付く。「先っぽがこぶしのような形をした30センチ前後が食べるにはちょうどいいようです」と話す。
ワラビのあく抜きでいつも迷うのは、重層、あくのどちらを使うかとその分量。阿良さんは重曹派だ。詳細は阿良さんのあく抜き法を参考にしてほしいが、ワラビ1キロに対する分量も小さじ1杯ほどと、少なくていいことが分かった。
自宅で早速、阿良さんに教えてもらったあく抜き法を試してみたら、きれいに仕上がった。芸術家で美食家としても有名な北大路魯山人が海のフグとともに美味として挙げた山のワラビはやはりおいしい。
阿良さんのワラビは1束200グラムで200~230円。庄内町狩川の風車市場=電0234(56)3039=のほか、鶴岡市藤浪の四季の里「楽々」でも7月中旬まで販売している。
ワラビ1キロ、水2リットル、重曹小さじ1
2009年6月13日付紙面掲載