ある直売所の前を歩いていたら、段ボール箱にとてつもなく長いナスが入っていた。30センチ以上の長さで、途中からくにゃりと曲がっている。不思議なナスだと思い、県庄内総合支庁酒田農業技術普及課のスタッフに調べてもらったところ「マーボーなすというナスだそうです。生産者を紹介してもらいました」と連絡がきた。
「種苗メーカーが開発した品種のようです。大きな袋にも入りきらないほどに成長するのですが、今年は夏の長雨でわたしのナスはそれほど大きく育ちませんでした」。酒田市のみどりの里「山居館」でマーボーなすを販売している齋藤隆介さん=穂積=が苦笑いした。
マーボーなすの栽培を始めて3年目。「まだ、メジャーでないので、認知度はいまひとつです。でも、1度食べてみて『おいしかったよ』と2袋ドンと買ってくれた人がいました」と胸を張った。
見た目は規格外品の「はじき」のようだが、実力はなかなかのものらしい。「皮も実も軟らかく、アク抜きも不要。とにかくおいしいナスです」と齋藤さんが太鼓判を押す。
調理法はやはり、品種名にもなっている「マーボーナス」が合うようだ。齋藤さんは「食べ方が分からないと思って自分でラベルを作りました」と笑顔で話す。見せてもらったラベルには「マーボーなす、揚げ出し、夏野菜カレー」と記載してあった。
「わたしはさっと洗って包丁で切り、カレーにぼんぼん入れています」。あく抜きの必要がないので使いやすそうだ。そして「もちろんマーボーナスにもします。わが家ではおすすめレシピより辛めの味付けで、ニンニクも多めに使っています」と続けた。ただ、みそ汁にはあまり向かないらしい。「ナスとしてのくせ、個性がないのでみそ汁は普通のナスの方がいいようです」。
直売所で発見したマーボーなすを事前にわが家で料理している。家族の感想は「皮も身も軟らかくておいしいが、ナス自体の味が控えめ。濃いめの味付けをする料理が合うのでは」だった。齋藤さんにその話をすると、「なかなか鋭い分析かもしれませんね」とお褒めの言葉を頂いた。
畑でマーボーなすを見せてもらった。成長途上のものばかりで、写真で「本物」をお見せできないのが残念。「今年は不作で数は出せません。もう1人の生産者と協力して連休中は頑張ってみます」と言ってくれた。
齋藤さんのマーボーなすは中型が5、6本入って400グラムで100円。酒田市山居町一丁目の山居館=電0234(26)6222=で販売している。
マーボーなす400グラム、万願寺とうがらし30グラム、豚ひき肉200グラム、ネギ1/2本、ショウガ1かけ、ニンニク1個、ゴマ油大さじ1、A(トウバンジャン小さじ1、テンメンジャン大さじ3)、B(しょうゆ大さじ1、砂糖小さじ1、酒大さじ1、鶏がらスープの素大さじ1)、水1カップ、揚げ油適量、かたくり粉大さじ1/2
2009年9月20日付紙面掲載