クレソンという野菜に読者の方はどんなイメージを持っているだろうか。「どうせ、料理の付け合わせだろう」。こんな認識が一般的ではないか。今回の記事を読んで、その「実力」の一端を分かっていただければ幸いである。
「山菜、ハーブ、どちらの本にも載っているんです。7年ほど前、近くの山に自生していたのを分けてもらい、わき水が流れている沢で栽培しています。種が飛ぶせいか、どんどん増えています」。酒田市のみどりの里「山居館」でクレソンを販売している小松陽子さん=生石=が話す。
クレソンの栽培は清流が適しているらしい。「寒さには強いが、霜には弱い。流水の中ならその点は大丈夫。生命力がとても強い野菜なんです。花を摘んでおけば、通年で取ることもできます」と胸を張った。
5年ほど前、ある料理店で、ご主人が釣った魚の刺し身のツマに、おかみさんが取ってきたクレソンが添えられていた。意外な取り合わせを楽しんだ記憶がある。
小松家での料理法は肉料理などの付け合わせのほか、サラダが多いという。面白いと思ったのがおすすめレシピのあえ物とみそ汁。「ゆでるのではなく、さっとお湯にくぐらせるのがいいと思います。ハーブと同じで独特のくせがあります。ミツバのような感覚で使ってみてください。近所の人にあげたら、みそ汁がおいしかったと言ってくれました」。
生のクレソンをその場で口に入れてみた。ちょっと苦味があり、ミツバとハーブを足して2で割ったような感じがする。「香気好き」なら喜びそうだ。「観光シーズンだと、珍しさもあってか、よく売れますが、最近は不景気でオフシーズン。値段の割に量が少ないのもあるのか、キャベツなどに負けてしまうようですね」と顔を曇らせた。
家に戻り、クレソンをさっと湯にくぐらせておひたしにしてみた。ミツバ、もしくはセリを思わせる味わいだが、火が通ったせいか、苦味がうそのように消えた。鮮やかな緑色がきれいでとてもおいしい。次に煮立った汁を茶わんに取り、切ったクレソンを散らす。これもいい。ただ、苦味を期待する人には物足りないかもしれない。
クレソンは、カルシウムや美肌効果があるカロテン、ビタミンCなどを豊富に含み、栄養価の面からも優れものと言える。スープに入れたり、焼いたスライス肉でくるんだりと、用途は広そうだ。小松さんのクレソンは「量ったことがないので適量」という大判振る舞いの1袋100円。酒田市山居町一丁目の山居館=電0234(26)6222=で販売している。
クレソン1束、しょうゆ、かつお節、塩各適量
2009年12月12日付紙面掲載