「次回の素材は生で食べる大根はいかがでしょう? 生産者は以前に出た方ですが、お孫さんが昨年、就農して2人で頑張っているようです」。県庄内総合支庁酒田農業技術普及課の推薦で、遊佐町の道の駅「ふらっと」で紅しぐれ大根を販売している鈴木廣世さん=下藤崎=を訪ねた。
「色は名前の通りの赤で、形はずんぐりしています。すりおろして食べてみると、やはり大根でした。酢の物に最適のようです」。廣世さんが笑顔で迎えてくれた。
前回の取材ではイボのないキュウリ「フリーダム」を取り上げた。そのおいしさに驚き、廣世さんを含む町内の女性グループ手作りの「あかり味噌」との相性の良さに感心した。
珍しい大根を手掛けたきっかけを聞くと、「ほかの会員が販売しているのを見て、面白そうだと思い、植えてみました」という答えが返ってきた。「大黒様や正月料理の酢の物に使いましたが、酢を加えると真っ赤になってきれいですよ。食べてみますか」と、干し柿と一緒にあえた酢の物を出してくれた。
口に入れてみると全然辛くない。もっと早く知っていれば、正月に間に合ったのに、とちょっと悔しい気がした。
畑への案内をお願いした。出荷用のネギの処理をしていた孫の恵吾さんが自宅近くの砂丘地に連れて行ってくれた。歩きながら、両親が会社勤めなのに農業を選んだ理由を質問する。「小さいころから手伝っていたので、農家になるのに抵抗はありませんでした。自然に就農したという感じですね」。
「これなんかどうでしょう」。恵吾さんが紫色の大根を引き抜いた。地中の部分の方が色が薄い。上は赤カブを思わせる赤紫、下は淡い赤だ。
廣世さんが採れたての紅しぐれ大根を早速すりおろしてくれた。きれいな赤色で、しょうゆをかけるのがもったいない。意を決して口に入れると辛みがない。大根納豆もいいなと心の中で思った。
「生のまま、あかり味噌を付けて食べるのはどうでしょう」と提案してみた。赤いのは表面だけで中は白い。「しゃきっとしてる?」と聞かれ、「みずみずしくておいしいですよ」と答える。自らも口に入れた廣世さんも「くせがないねー」と感心したように話し、「生のままでもいける。サラダや白菜との一夜漬けもいいかも」と続けた。
帰宅後早速、紅しぐれ大根を生のままみそとみそマヨネーズで食べてみた。新鮮なせいもあるだろうが、子供も次から次に手を出す。翌日は大根おろしにして、ゆでた小松菜とあえ、「温ぶっかけうどん」にも使ってみた。辛みがないのが物足りないという人もいるかもしれないが、サラダ、酢の物、大根おろしといろんな料理に使えそうだ。
孫と二人三脚で作る廣世さんの紅しぐれ大根は1本85円。遊佐町菅里のふらっと=電0234(71)7222=で2月末まで販売している。
紅しぐれ大根、塩小さじ1、米酢大さじ2、砂糖大さじ5
好みで干し柿やいった黒豆などを入れてもよい。
2010年1月30日付紙面掲載