雪の下から掘り起こす。アサツキにはそんなイメージがある。「昨年は大雪で収穫作業が大変でした。農協が除雪機械を農家に貸し出すほど。今年は暖冬で作業が進みます」。酒田市袖浦地区の産直施設・食彩工房いちご畑にアサツキを出荷している高橋浩之さん=十里塚=が安堵の表情を浮かべる。
庄内では冬場のビタミン源としてアサツキが珍重されてきた。中でも砂丘地を活用して栽培している十里塚地区は大生産地。「村の中に入ると、ネギのにおいがすると言われています。きらいな人は耐えられないでしょうね」と笑った。
アサツキは酒田ではキモトと呼ばれる。6月に種用の球根を掘り起こし、8月のお盆過ぎに畑に植え付ける。秋になると緑色の葉が顔を出し、冬になると枯れる。地中にある新芽を収穫する。
掘り出したアサツキは平箱に並べ、ハウスに移す。毎日水をやり、1週間ほど成長させてから水で洗い、毛根を切り落とし、皮をむいて出荷する。「アサツキは値段がいいと思われているかもしれませんが、手がかかっているんです」という高橋さんの説明に納得した。
砂丘地にある高橋さんのハウスに連れて行ってもらった。足を踏み入れた瞬間、体はネギのにおいに包まれた。平箱には収穫を待つアサツキがびっしり詰まっている。根元は白く、緑色の葉がみずみずしい。「昔はばっちゃんたちが細々とやっていた。収穫前まで土をかぶせていたので、葉の部分は黄色でした」と教えてくれた。
高橋さんの自宅で「定番」の酢みそあえと天ぷらをいただいた。先に初体験の天ぷらを食す。山菜のような春の息吹が口の中に広がった。「アサツキ好きを自認しながら、なぜ今まで食べなかったのか」。後悔先に立たずとはよく言ったものだ。取れたてだけに酢みそあえもしゃきしゃき感があり、美味だった。
「ゆでてマヨネーズやドレッシングで食べてもいい。ハムやお肉系と一緒に、塩コショウやしょうゆでいためてもおいしいですよ。私は天ぷらやいため物の方が好きです」。こう話すのは奥さんの博美さん。長いアサツキの場合、火が通りにくいので、半分に切って根元からいためるのがいいそうだ。「いためてラーメンに入れてもおいしかったですよ」と続けた。
アサツキには早生(わせ)と晩生(おくて)があり、早生は根が太く丈も長い。晩生はその逆。高橋さんが栽培しているのは早生だ。「酒田の人は長いのを好まないので、いちご畑には短いものを出すようにしています」という。
新鮮なアサツキの見分け方のポイントについて「根っこは切ってから日がたつとネギと同じで中が出てくる。買うときは根元を見てください」と話す。
「今年は雪がないので早く収穫が終わるかも」という高橋さんのアサツキ。今は150g入り1袋を150円ほどで販売しているが、次第に値は下がるという。3月中旬までいちご畑で販売している。
アサツキ200g、アサリ(むき身)100g、酒大さじ2、A(だし大さじ1、砂糖大さじ2/3、練りがらし小さじ1、酢大さじ1.5、白みそ大さじ1、塩少々)、塩適量
2007年1月13日付紙面掲載