直売所に置いてある定番野菜の代表選手がホウレン草だ。今では年間を通じて出回っているが、「旬」とはいつなのだろう。そう考えながら鶴岡市百万石の里「しゃきっと」で販売している河崎孝さん=馬町=を訪ねた。
疑問を口にすると、「ほかの野菜にも言えることかもしれませんが、冬の寒さに耐えてきたこの時期は葉も厚く、すごく甘みがのっています」という答えが返ってきた。どうやら今が「食べごろ」らしい。
河崎さんは、ホウレン草栽培で露地とハウスを併用しているが、主体はハウス。「露地栽培だと風などで葉に傷が付きます。食べるのに支障はありませんが、買う人は見た目も気にする。それにハウス物の方が軟らかい」というのが理由だ。農薬や消毒の必要がないのもハウスの利点。「安全なものをと心掛けています」。
収穫したホウレン草はすべてしゃきっとに出荷する。「平日は20束、土日は40束ぐらい。ありがたいことにほとんど売れ切れになります。でもみんなが出す時期はたまに残ることもあります」と話す。「それはいつですか」と質問すると、「ハウスで育苗する前の今の時期なんです」と笑った。
しゃきっとでは、売れ残った野菜は生産者が持ち帰り、翌日は収穫したばかりのものを店頭に並べる。鮮度にこだわり、消費者の信頼を大切にしているのだ。「直売所の名前の通り、しゃきっとしているものを選んで」と新鮮なホウレン草の見分け方を教えてくれた。
ホウレン草の料理法、栄養価はいまさら説明するまでもないだろう。河崎さんのおすすめレシピは意外なことにお好み焼き。「ちょっと変わっているけどおいしいのよ。フライパンを使ってできるし、生地を作る必要もありません。ご飯にもビールにも合います」。
ゆで方で「裏技」を伝授された。「塩と一緒にスライスしたレモンを入れると、えぐみというか、あくが少なく、甘味が出ますよ」。これは試してみる価値がありそうだ。
珍しいものをごちそうになった。それはホウレン草のシフォンケーキ。「きれいでしょう」と言うように、切り口が鮮やかな緑色をしている。口に入れるとふわふわとした食感が心地よい。「ホウレン草の味がしないので野菜嫌いの子供でも大丈夫です」と胸を張った。
ビタミンA、Cやカロテン、鉄分など体に必要な栄養素を多く含むホウレン草が苦手という子供が多い。河崎さんたち農協女性部のメンバーは菓子加工も手掛けている。ホウレン草のほか、カボチャやニンジンなど色々な野菜のシフォンケーキをしゃきっとで販売している。小麦粉の代わりに米粉を使っているのが面白い。
ホウレン草を毎日のように食べているからか、河崎家の家族は病気知らず。「元気の素」のホウレン草は1束90円で5月まで販売している。4月末には「サラダあかり」という生食用ホウレン草も登場するという。こちらも楽しみだ。
ホウレン草、ツナ缶、エリンギ、卵、削り節、スライスレモン、塩、マヨネーズ、お好み焼きソース
2007年3月24日付紙面掲載