文字サイズ変更



  • プリント用表示
  • 通常画面表示

「式部ナス」皮軟らかく実と一体

ナスと言えば、夏から秋が旬というイメージがあるが、庄内産の「初もぎ」がもう出ているとの情報を入手した。今回、取り上げるのは煮物、焼き物、揚げ物に最適の「式部ナス」。酒田市の「ヨッテーネ」と「食彩工房いちご畑」に出荷している佐藤敏一さん、康子さん=坂野辺新田=夫妻を訪ねた。

「ナスを栽培していると、ほかの野菜を作る暇がない。来月からは日曜もお盆も関係ありません」。敏一さんが笑いながら話す。

式部ナスはハウスで栽培される。「夏は朝のうちに取らないとナスがぼけて、つやがなくなってしまう。夜明けと共に収穫して作業場で箱詰めし、夕方には市場に持って行きます」。「ぼけナス」という言葉はここから来たのかと一人で納得した。

ナスは大きいほどおいしいそうだが、成長に従い種も大粒になり、味覚の「妨げ」になる。式部ナスの場合、実が大きくなっても種は小さいまま。しかも皮が薄く軟らかい。

だが、長所は短所にもなり得る。皮が薄いために傷が付きやすいのだ。規格外の「はじき」が出やすいデリケートな野菜と言える。加えて交配にはミツバチの助けが必要。「だからお金がかかるんです。ハチが死ぬので農薬も使えません」と苦笑いした。

ハウスに入ってみると、確かにミツバチの羽音が聞こえる。ナスの表面は紫というより黒に近い。「これが本来の色。夏場になると葉に隠れて日が当たりにくくなるので紫になるんです」。

ナスは日持ちする野菜と思っていたが、間違いと分かった。「水分が多く、暖房もクーラーも受け付けません。だからスーパーでは袋に入っているでしょう」。なるほど納得。

ナスの料理法は幅広い。「山形県人はナスが好き。1人当たりの消費量は全国一じゃないかな」と敏一さん。佐藤家の夏の食卓には毎回、ナス料理が登場する。「個性がないから何にでも合います。私は油でいためてスクランブルエッグと合わせたりしますよ」と「男の料理」を教えてくれた。

ここからは横で話を聞いていた康子さんの出番。「あく抜きはした方がいいです。いため物ならコチュジャンをからめてひき肉といため、砂糖としょうゆで味付けしてかたくり粉でとろみをつける。薄切りにして生のまましょうゆの実と合わせ、即席漬けにする人もいます。みそ汁はもちろん、何にでも合いますよ」とにっこり。

見るからに実が締まった佐藤夫妻が育てた式部ナス。色は黒に近い

新鮮なナスは「皮にツヤと張りがあり、ヘタにあるとげが生き生きしている」そうだ。「ナスには体を冷やす効果があるので夏にぴったり。皮には目にいいと言われるアントシアニンが含まれています」。

帰宅後、もぎたての式部ナスをごま油でいためた。甘みがある上、皮が軟らかく、実と皮が一体化している。これならむく必要はないなと感じた。

佐藤夫妻が丹精込めて育てた式部ナスは今なら1個50円前後、夏場は30~35円。ヨッテーネでは康子さん、いちご畑は敏一さんの名前で販売している。

佐藤さんのおすすめレシピ

式部ナスの素揚げ

○材料

式部ナス、かたくり粉、大根、ポン酢かめんつゆ

○作り方

  1. 式部ナスを短冊切りにしてかたくり粉にまぶす。
  2. 切ったナスを素揚げにする。
  3. 大根おろしを揚げたナスに載せてポン酢をかける。めんつゆで代用してもよい。

2007年5月18日付紙面掲載

トップページへ前のページへもどる
ページの先頭へ

Loading news. please wait...

株式会社 荘内日報社   本社:〒997-0035 山形県鶴岡市馬場町8-29  (私書箱専用〒997-8691) TEL 0235-22-1480
System construction by S-Field