庄内は地域に伝わる在来野菜が豊富な土地柄なのだそうだ。在来の野菜にはカブの種類も多く、温海カブのほか、近年は鶴岡市藤沢地区の藤沢カブ、宝谷地区の宝谷カブなどが注目を集めている。今回、取り上げる素材も在来のカブだが、「出身」は庄内ではなく滋賀県らしい。
「細長くて見た目はミニ大根そっくり。藤沢カブの亜種ではないかと私は思っています」。鶴岡市藤島地域の「四季の里楽々」で日野菜蕪(ひのなかぶ)を販売している菅原俊幸さん=勝福寺=が話した。
まずは現物をと、収穫した日野菜蕪を見せてもらった。細長い「体形」は藤沢カブと似ているが、もう少し細くした感じだ。根元は白く、茎に近い部分は赤紫、葉はやや赤みがかった緑という色合いが美しい。
素材にほれ込んだ菅原さんの父親が30年ほど前、自家用に栽培を始め、2002年から産直向けに出荷するようになった。「病気にも虫にも弱い」ため、庄内の市場には流通していない。10月から12月にかけての秋野菜だったが、今年は初めて「春取り」に挑戦。今月中旬から収穫が始まった。
食べ方は、ほかのカブと同じように浅漬けを中心にした漬物がメーン。菅原家では浅漬けのほか「もろきゅうのように生のままみそを付けて食べています」。気になる味の方はというと、「緻密で軟らかい。丸カブよりきめが細かく、パリッとしていて、しゃきしゃきした食感」だという。
「ほかにたくさん野菜があるから」と菅原家では葉は食べないそうだが、「みそ汁やけんちんに使えばおいしいと思いますよ」。日野菜蕪は「京野菜」に位置付けられ、関西圏では人気上昇中なのだとか。生食だけでなく、いろんな料理法が考えられそうだ。
県庄内総合支庁の「食の都庄内」親善大使でもあるレストラン欅の太田政宏総料理長のお気に入り野菜でもある。楽々に本人が直接仕入れにいく。
太田総料理長は「さっとゆでて、こりっとした食感を残すようにして、洋風の刺し身の付け合わせに使っています。しゃきっとしておいしいですよ」と太鼓判を押す。
2006年11月に秋篠宮さまが遊佐町を訪問した際、欅で日野菜蕪を召し上がった。「在来野菜ですと説明したら、びっくりされ、『この辺の野菜はおいしいですね』とおっしゃっていました」と太田総料理長。来月には日野菜蕪入りのピクルスを酒田夢の倶楽で販売するそうだ。
菅原さんにいただいた日野菜蕪を編集局の女性スタッフたちにおすそ分けした。「香りがいい」と「前評判」は上々。翌朝、感想を聞くと、「軟らかくておいしい」「生食したらかんでいるうちに甘みが出てきた」と支持を得た。
菅原さんの日野菜蕪は8本ほど入って1束80円。6月中旬まで楽々で販売し、3カ月余り休んだ後、10月には秋取りが登場する。
日野菜蕪1kg、焼酎1カップ、砂糖350~450g、塩150g
メモ ユズやショウガをあしらうと味が引き立つ。
2007年5月26日付紙面掲載