読者から「新サンマが並んでいますが、サンマに雄、雌はありますか。性別があるとすれば、味の違いも教えてください。卵はおいしいのでしょうか」という質問をいただきました。
結論から言うと、サンマに性別はあります。雄と雌ではどちらがおいしいかという質問の答は、一般論になりますが、産卵が近くなると雌は卵に栄養がいくので味は雄より落ちると思います。魚屋さんやスーパーの店頭に並んでいるサンマの場合、性別で味に優劣はないと考えてよいでしょう。サンマは日本近海で産卵するわけではないからです。日本で食用に出回るサンマは、腹に卵を抱いていません。だからサンマの卵を食べるという文化はありません。卵の味についていろんな人に聞いてみましたが分かりませんでした。
サンマの英語名はパシフィックサリー、学名はサイラです。近畿地方の紀伊半島や志摩半島ではサンマをサイラと呼びます。日本の地方名が世界共通の学名になったおもしろい例です。
サンマは日本では8月に北海道で捕れ始めます。それから11月に千葉県の銚子沖あたりで捕れるものまでを生サンマとして食べているのです。これ以外の期間は、脂が乗った時期に冷凍しておいたものを解凍したり、干物やひと塩した塩サンマにして年間を通して食べているのです。紀伊半島では丸干しやおすしにして食べる食文化もあります。
サンマは、産卵のため南下していくうちに脂が落ちていきます。九州沖まで南下しますが、太平洋だけでなく日本海の寒流に乗って南下するサンマもいます。この辺では新潟沖でも見られます。サンマは「流れ藻」という藻に産卵します。佐渡島では流れ藻に入ったサンマを手づかみすることもできるそうです。サンマの卵はメダカの卵に似ているといいます。
サンマの性別は外観からは分かりにくく、産卵の条件が整う体長27センチ以上になれば、腹を割いて卵巣が確認できます。調べてみたら、サンマは夏を除いて年間を通して産卵していました。季節ではなく、一定以上の大きさになると卵を産むようです。1回で1000個から3500個を4日から6日のペースで産んでいくのです。成熟する冬に産卵するものが多いようです。雌が産みつけたブドウ状の卵に雄が放精して受精するのです。ハタハタと似ています。
サンマについてはいまだに不明な点がたくさんあり、身近な魚なのに研究が進んでいない面もあるようです。庄内では昔はサンマを食べませんでしたが、今ではよく食べるようになりました。産地が遠いわけではないので、今後はもっと食べてもらえる魚になるような気がします。
庄内浜の底引き網漁の近況についてお話しします。由良ではカレイ類が中心です。鼠ケ関ではエビ漁が行われ、沖合はスケトウダラ漁に変わってきました。酒田では大半の船がホッケに向かっているようです。アマダイ、キスといった夏の魚はあまり見なくなってきました。もう少しするとハタハタが増えると思います。その後はタラに移行していくことでしょう。
(鶴岡水産物地方卸売市場手塚商店社長・手塚太一)
2008年10月3日付紙面掲載