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「骨なし魚」あるけれど…

読者から「カタログなどで売っている骨抜き魚はどうやってできるのですか? なんとなく抵抗がありますが、手塚さんはいかがですか?」と「スーパーで買ったにぎりずしにツブ貝がありました。汁の具にする小さな巻き貝と思っていましたが、白身で厚めの身は歯触りがよく、新鮮な驚きでした。ツブ貝について教えてください」という2つの質問がきました。

骨抜き魚についてお話しします。骨なし魚とも言います。1998年ごろ、骨なしタチウオというものが最初に出ました。魚は一般的に高タンパク質、低脂肪の良質な動物性タンパク質を多く含みます。骨なし魚は最初、病院食として加工開発されたのです。そこから学校給食やレストラン、ホテル、旅館、弁当店などで少しずつ使われるようになり、現在は外食産業にも広く浸透してきました。

骨抜き魚にはタチウオのほかサワラや真アジ、赤魚、メダイなどがあります。いずれも外国産です。水揚げされた国からタイやベトナム、中国などに運ばれ、骨を抜く作業が行われます。分業化が進み、産地と加工する国が別になっているのです。米国産赤魚の中国加工、オランダ産アジのベトナム加工といった具合です。もちろん原料は冷凍魚です。それを解凍して加工後に再度、冷凍します。

ニュージーランド産メダイの骨なしの切り身です

魚というのは捕れる時期などにばらつきがあります。クチボソもそうですが、時期によっておいしい産地や漁期、大きさ、捕れる場所が限定されることも多いのです。たくさん水揚げがあったから骨なし魚にするのではなく、先を見込んで計画を立てているのです。魚によっては切り身だけでなく、一度開いてまた閉じて、「一匹まま」になることもあります。魚の身をくっつける時にはトランスグルタミナーゼという酵素性剤を使います。厚生労働省にも認められている食品添加物で、人体への害はないとされています。

骨なし魚は、骨がわずらわしいという病人や手がうまく使えないという方にはいいでしょうし、骨を嫌がる子どもも食べやすく、魚食が増えるという面はあるかもしれません。でも庄内ではおいしい魚がたくさん捕れるので、子どもたちには骨のある魚を食べさせたいと私は思っています。

次にツブ貝の質問にお答えします。すしダネになっているツブ貝の大半は北方領土周辺を含むロシア産です。ツブ貝というのは標準和名ではなく、巻き貝の一部の通称名です。えぞぼら貝という貝が一般的にはツブ貝と呼ばれています。われわれの市場の呼び名は北海真つぶです。

ツブ貝とバイ貝にはたくさんの種類があり、われわれがバイ貝と呼ぶ貝をツブ貝と言う地域もあります。一般的に日本海側ではツブ貝をバイ貝と呼び、北海道や太平洋岸ではツブ貝と呼んでいます。サザエ以外の、刺し身で食べる巻き貝の総称と考えてもいいかもしれません。

回転ずしで出てくるツブ貝はえぞぼら貝で、庄内で夏に汁に使う小さな巻き貝とは別物です。庄内でえぞぼら貝と似た食感の貝に白バイがあります。えぞぼら貝の内臓は家庭では食べないようにしてください。内臓近くのコリっとした塊に弱い麻酔毒があるからです。

ツブ貝の語源は形がつぼに似ていることからつぼがツブに変わったようです。余談になりますが、こちらで黒バイと呼ぶ貝の先っぽの螺塔(らとう)というらせん形をした部分に鉛を流し込んで作ったものがベーゴマになりました。黒バイがなければベーゴマも生まれなかったかもしれません。 

(鶴岡水産物地方卸売市場手塚商店社長・手塚太一)
2008年12月4日付紙面掲載

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