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昭和天皇の御献立再現・中 鯛を「オランダ」で揚げる

「鉢肴」に登場したアマダイもコダイと同じように、脂が乗る夏がおいしい魚です。甘鯛肉けんちん焼の「肉」を木曽さんは「身」と解釈しました。料理法を木曽さんに解説してもらいましょう。

「アマダイを三枚におろし、味噌幽暗(みそゆうあん)に一昼夜漬け込み、観音開きにします。次にキクラゲ、ユリ根、ニンジン、から煎りした松の実、ミツバを甘辛く炊いて卵でとじます。これがけんちんの生地です。それをアマダイの身で巻いて焼くのです」

下味が十分に付いていてとてもおいしくいただきました。コダイの塩焼きもそうでしたが、切り身に骨がありませんでした。「天皇陛下にお出しする魚料理は、口の中に刺さったりすることがないよう、骨、とげを取るはずです。だから切り身を使い、一匹焼きはしません」という木曽さんの言葉にわたしは思わずひざを打ち、納得しました。

正賀は、はじかみのショウガでしょう。「日の出に見立てて包丁を入れてみました。今はハウス物ですが、8月ならもっと大きなショウガを使ったと思います」と木曽さん。含め栗はむいたクリを下ゆでし、甘めのシロップに漬けて煮たものだそうです。

料理は木曽さんが担当しました。わたしが仕入れた素材の持ち味を十分に引き出してくれ、とても感謝しています

アマダイは、夏の時期にぜひとも食べていただきたい魚です。大きなものは値も張るので、料理屋さんに回ることが多いかもしれません。昭和天皇には焼き物をお出ししたようですが、刺し身にしてもとてもおいしいのです。ただし、身が軟らかいため、料亭などではコブ締めにするようです。

「煮物」は鯛オランダ煮です。戦後、すぐに庄内でオランダ料理? と疑問に思いましたが、木曽さんが「和食でオランダは油を指す言葉です。タイの身を揚げて煮たのだと思います」と解説してくれました。

ナメコは、前年の秋に採り、塩漬けして保存しておいたものを戻したのでしょう。芽の子は、木の芽のシーズンからはずれているので、木の芽やサンショウは使わなかっただろうというのが木曽さんの考えです。

では芽の子はなんでしょうか? 木曽さんが導き出した答えは「芽ではなく、芋だったのではないか。両者は字が似ているので、誤って伝わったのかもしれない。そうでなければ、時間が経過したため、新聞に印刷した文字がにじんで芽に見えるのかも」でした。くず粉を付けて揚げたタイの切り身にナメコを加えただし汁をかけ、イモの子を添えて煮物が完成しました。

次は「中皿」。庄内浜の夏の主役とも言えるアワビを使った福羅煮です。まず料理法を木曽さんが解説します。

「アワビを大根と一緒に2時間半煮ます。軟らかくなったところで取り出し、甘辛く濃い目の味付けをしました」。木曽さんの父親の久夫さんがあつみ温泉のホテル「萬国屋」料理長時代、得意にしていた料理だそうです。「毎年、アワビ料理を楽しみに来てくれる内陸のお客さんがいました」と久夫さんが振り返ります。

とても軟らかく煮てあって、アワビの奥の深い味わいを感じることができました。添えられたナスも夏を代表する野菜ですから、陛下も庄内の味を堪能されたのではないでしょうか。

「丼」は、暫忻亭の名物料理でもある胡麻豆腐です。これは庄内の人には説明するまでもありませんね。くずあんにおろしショウガを添えると夏らしくなります。

(鶴岡水産物地方卸売市場手塚商店社長・手塚太一)
2009年4月10日付紙面掲載

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