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エンガワと言えばヒラメ

読者から「スーパーでエンガワの刺し身をパック入りで売っていました。ヒラメと思ったらカラスガレイと書いてありました。エンガワというのはヒラメのことではないのですか? マガレイなどのカレイ類も刺し身で食べることができると思いますが、エンガワはヒラメのようにおいしいですか」という質問をいただきました。

エンガワと称して売られている魚は、ヒラメ、オヒョウ、カラスガレイ、アブラガレイの4種類に大別されます。エンガワと言えば、一般的にはヒラメのエンガワを指します。もともとは、ヒレを動かすヒラメの筋肉のことで、家屋の縁側に形が似ていることから名が付きました。小さなヒラメにももちろんありますが、取り出すのが難しく、手間もかかります。それに脂の乗りもよくありません。だから、すし屋さんでは1匹1・5キロ以上、体長50センチ以上の大型サイズを仕入れています。特上のにぎりずしに入れるお店もあるようです。にぎりずし1個のお値段は、ヒラメの1・5倍ぐらいという高級ネタです。

ヒラメの部位でもエンガワはとてもおいしい所です。すしネタとして知られるようになり、ほかのカレイ類にも同じ部分がおいしい魚がいたため、前述のカレイ類が流通するようになったのでしょう。

ヒラメのエンガワは高級品です。1匹の身からわずかしか取れないのです

先に挙げた4種類のエンガワのうち、最も多く流通しているのがカラスガレイです。ほとんどがアイスランドやロシア、カナダなどからの輸入物で、国内では駿河湾以北の深海で捕れます。でもほとんど流通していません。昔は、カラスガレイはあまり評価されていませんでした。近年、脂っこい魚が脚光を浴びるようになり、評価が上がりました。

オヒョウは、カレイ類の中では大きい方で、体長2メートル以上、重さ200キロ以上のものもいます。脂肪分が少なく、水っぽい身質です。コブ締めにするとおいしいと言われています。あまりに大きくて、生きていると激しく暴れるので、水揚げの時に死者が出たこともあるそうです。国内でも北海道や青森県の一部で若干捕れますが、エンガワとして流通しているものの大半は海外産と考えていいと思います。イギリスにフィッシュ&チップスという揚げ物料理がありますが、オヒョウを使うそうです。

アブラガレイも流通している大半がカナダやアメリカ産ですが、東北でも捕れます。鼠ケ関にもたまに揚がります。ウマヅラと同じように頭を落とした状態で市場に揚がり、競りにかけられます。名前の通りとても脂が乗っていて、戦後まもないころは食用ではなく、油そのものを取るために捕獲されていたそうです。

エンガワの中で一番おいしいのは言うまでもなくヒラメ、最も多く流通しているのはカラスガレイです。最初はエンガワ=ヒラメでしたが、将来はエンガワと言えば海外産のカレイのエンガワを指すことになるかもしれません。

質問の中に「マガレイのエンガワもおいしいか」とありました。マガレイはクチボソのことですが、小型なので取り出しにくく、脂もあまり乗っていないと思います。これからの時期ならマコガレイ、つまりエンショウ(円正)ガレイの方がおいしいでしょう。

(鶴岡水産物地方卸売市場手塚商店社長・手塚太一)
2009年5月5日付紙面掲載

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