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鮮度保持効果高い水氷

読者から「スーパーなどの売り場で、サンマが氷水に入って売られているのはなぜですか? ほかの魚ではこんなことはないと思います。氷水に入っているのは生の新サンマ、冷凍サンマに共通なのでしょうか」という質問をいただきました。

確かに店頭のサンマは氷水に入っています。サンマ以外にサバやイワシ、アジなども氷水に入れて売ることが多く、イナダやマコガレイも氷水に入れて売ることがあります。魚が産地で捕獲され、消費地に届けられる際、サイズごとに選別、箱詰めされ、鮮度を保つために氷を使って輸送します。箱に氷水を入れることをわれわれの用語で水氷と呼んでいます。庄内浜では一般的に水を入れずに氷だけを詰めます。これを下氷と言います。箱詰めにはこの2種類の方法があるのです。地域で大別すると、太平洋側は水氷、日本海側は下氷が多いようです。理由は分かりませんでした。地域性ということなのでしょう。

水氷と下氷にはそれぞれ長所と短所があります。水氷の長所は鮮度の保持という点にあります。魚体全体を冷やすことができるからです。短所は魚の目が白くなりやすいということです。「魚の鮮度は目で見ろ」とも言います。鮮度がよくとも、目が白くなっていてはマイナスです。また、時間が経過すると、魚体から血が出て水が赤くなってしまいます。そうなると、魚の鮮度にも影響してきます。水氷では塩分を含んだ海水を使うので、冷たくなり過ぎて魚が凍ってしまうこともあるのです。

鮮度保持のため水氷で出荷されたサバです

それでは下氷の方はどうでしょうか。魚と氷が直接触れると、氷の跡が魚体についてしまうのが欠点です。しかし、魚のサイズも生きの良さもひと目で分かり、見栄えもいいのです。でも、鮮度保持の面では水氷にはかないません。

水氷に入れられたサンマは、生サンマなら塩分濃度が3%、冷凍(解凍)サンマなら8%というように、水の塩分を変えます。魚によっては身に塩分が染み込み、しょっぱくなってしまうというケースもあります。

わたしが最もよい保存法だと思うのは、氷の上にシートやパーチと呼ぶシート状のものを敷き、そこに魚を置いてさらにシートをかぶせ、氷を載せる方式です。でも、売買の際に魚の姿が見にくいのであまり使われません。最近、新たな鮮度保持方法が出てきました。腐敗菌が少ない海洋深層水で氷を作り、水氷にするのです。こうすれば、魚の劣化が少なくて済み、水氷の欠点を補うことができます。とはいえ、生きの悪い魚に鮮度保持の方法を施してもだめです。魚は、とれたてを氷で死後硬直させるぐらいでないといけません。

最近、由良の定置網でアジが大量に揚がっています。これまでは下氷が主体でしたが、引き合いが出てきた築地市場に出荷することも考慮し、水氷仕立てにするようになりました。

天神祭が近づいてきました。庄内浜では先月まで、地物のタイは豊漁でしたが、ここにきてめっきり少なくなりました。今は、青森でたくさんの水揚げがあり、しかも産卵前で脂が乗っています。このおいしいタイは庄内にも入荷しています。サクラマスについては、日本海側から北海道の太平洋側に漁場が移ってきました。タイ、サクラマスとも今年は価格が安めなので、ぜひとも天神祭で召し上がっていただきたいと思います。

(鶴岡水産物地方卸売市場手塚商店社長・手塚太一)
2009年5月22日付紙面掲載

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