今回は、庄内浜で捕れるフグについてお話ししたいと思います。皆さんは、フグは高級魚で、とても手が出ないと思っていませんか? そうだとしたら、わたしたちのPR活動が足りないのかもしれません。実は庄内ではトラフグは別格として、安い値段でフグが手に入り、食べることができるのです。
磯釣りをする方にとって、餌を取っていくフグは、釣れても決して好ましい魚ではありません。でも、身近な存在とは言えるでしょう。一方で、庄内ではフグを食べるという食文化が浸透しているとは言えません。水揚げされたフグの中には県外に送られるものも多いのです。逆に言えば、消費者ニーズがあまりないため、地元で流通すれば安い価格で取引されるということになります。
フグを取り扱うには県の指導要綱により、講習会を受けて修了証を取得した上で届け出をしなければなりません。いくつかの「決めごと」をクリアする必要があるのです。フグは猛毒を持っていて、種類によって毒性も違います。1月に鶴岡市で発生した食中毒事件を持ち出すまでもなく、素人がさばくなんてもってのほかです。でも、きちんとした資格を持った人が調理したフグは、安全でおいしいのです。それに低価格という要素が加わるのですから、庄内の人は恵まれていると思いませんか?
庄内浜で今の時期によく捕れるのがゴマフグです。体長も大きく、刺し身、揚げ物、煮物、みそ漬けなどいろんな料理に使えます。フグの中の「万能選手」と言っていいでしょう。ゴマフグについては荘内日報社が6月末に発行するフリーペーパー「敬天愛人」の7月号で詳しく紹介します。
秋から冬にかけて多く捕れるのがマフグです。ゴマフグと同様にこちらも体長が大きく、この辺ではナメラフグとも呼びます。サバフグに似て身質は軟らかく、鍋物にするなら安くておいしい材料と言えます。同じ時期に出てくるのがショウサイフグです。こちらは身質が硬く、薄造りに適しています。しゃぶしゃぶのような食べ方も向いています。フグの中で最もおいしいとされるのはトラフグですが、ショウサイフグはこれに次ぐ存在と言ってよいでしょう。価格もほかのフグよりはやや高く、やや小ぶりです。
冬から春にかけてよく捕れるのが、食中毒事件で有名になったヒガンフグです。アカメフグとも呼びます。ショウサイフグと同様に身が硬く小型で生食に適しています。トラフグは真冬から春にかけて旬で、庄内でもたまに揚がります。値段はほかのフグより何倍も高い高級品です。
フグは身のほかに骨からもいいだしが出ます。おすし屋さんでアナゴに使う煮つめはフグの骨からだしを取るそうです。フグの価格は、高い方から順にトラフグ、ヒガンフグとショウサイフグ、そしてマフグ、ゴマフグです。庄内では低価格でフグを食べられるので、ぜひ皆さんにフグの味に親しんでほしいとわたしは願っています。
(鶴岡水産物地方卸売市場手塚商店社長・手塚太一)
2009年5月29日付紙面掲載