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魚の値段の決め方

「魚市場ではどのようにして魚の値段が決められていくのでしょうか。仕組みを教えてください。市場に就職するにはどうすればいいのでしょうか」という質問を読者の方にいただきました。今回は魚市場についてお話ししたいと思います。

鶴岡魚市場にはたくさんの魚が運び込まれ、早朝は活気にあふれます

市場での魚の値段の決定を一言で表せば、需要と供給のバランスに尽きます。順序立てて説明しますと、まず漁師さんが捕ってきた魚が港に水揚げされます。港にも市場があり、それを産地市場と呼びます。庄内では由良、鼠ケ関、酒田港などです。東北地方の産地市場で大きくて有名なのは、青森の八戸、宮城の石巻、気仙沼といったところです。この産地市場で最初に値段が決まります。この値段を「浜値」と呼びます。産地市場の価格は、全国的な需要を見据えたもので、買い手側の状況が必ず反映されます。もちろん競り(競売)も行われます。ここで買い手が決まります。

競りについて説明しましょう。競りは価格を上げていくのが一般的ですが、鶴岡や由良の市場は「下げ競り」といって価格をだんだん下げていく全国でも珍しい方式です。秋田県の金浦や象潟では、途中まで価格を下げていき、一定のところから上げる「下げ競りの上げ競り」を採用しています。符丁(暗号)を使い、市場独自の数字の呼び方で競りは行われます。一般の人が競りを見ていても全く分からないはずです。

たくさんの魚がまとまっている場合、競りにはかけず入札を行うことがあります。タラのオスが何ケースというような時です。入札参加者は、紙や黒板にほしい量と値段を「何個、何千円」というように記入して「競り人」に渡します。高い価格を入れた人が競り落しますが、同じ価格の場合は早く札を入れた人が優先されます。一番強いのはすべて買い付ける「全量買い」です。トランプで言えばジョーカーのようなものでしょうか。入れた札の量、価格とも同じだった時は等分に分配されます。10個のものに対し、5人が1,000円だったら、2個ずつを分け合うことになります。最近は口頭で価格を競る「口競り」より入札が全国的に多いようです。

市場へと話を戻しましょう。産地市場の次に魚は消費地市場に運ばれます。庄内では鶴岡と酒田が消費地市場ですが、酒田は産地市場も併設されています。東京の築地も消費地市場です。ここで仲買人さんが魚を買うのです。鶴岡市場の場合、仲買人は全員が小売店です。鶴岡は「檀家商売」といって、以前は場所や売り先など自分のテリトリーを大事にし、人の領域には手を出さないという暗黙の了解がありました。

では、卸売市場とはどういう役割を持っているのでしょうか。競り人の心得では「集荷・分荷機能及び公正な価格形成、販売代金の決済等の場として、生産者と消費者をうまく結びつける重要な役割を果たす」と位置づけています。

消費地市場は中央卸売市場と地方卸売市場の2種類があり、中央卸売市場とはおおむね20万人以上の消費人口を有する市場で、開設するには農林水産大臣の認可を受けなければなりません。1県に一つの割合で設置され、山形県は山形市にある山形中央卸売市場ただ一つ。秋田県もそうです。

鶴岡は地方卸売市場になります。知事の認可を受け、一定の規模を有することと規定されています。産地市場の場合は330平方メートル以上、消費市場は220平方メートル以上の面積が必要と卸売市場法で定められています。

昭和の初めごろまでは、港に水揚げされた魚は種類別に分けたりせず、木箱などに入れて港から馬車で鶴岡市場に持ってきて、魚種、サイズごとに分けたそうです。産地市場も兼ねていたのでしょう。

消費地市場では最近、競りにかけず売り手と買い手が1対1で話し合い値段を決める「相対(あいたい)」という取引が増えています。鶴岡市場も同様です。私たち卸売業者は鶴岡市場に品物が入らないようになってしまうと困ります。一方、仲買人である魚屋さんは、消費者に安くておいしい魚を食べてほしいと考えます。それぞれの立場を尊重しながら、両者が話し合って折り合いを付けていくのです。

市場に勤めるにはどうしたらよいかという質問ですが、求人募集に応募してもらえばいいわけです。競り人になるには県の試験に合格する必要があります。市場は朝が早いので大変です。早いときは午前2時半、普段は午前3時に仕事を始め、昼前に帰宅します。釣りにいくなど趣味がある人はいいかもしれませんが、休日は日曜、祝祭日、月に2回の土曜ぐらいで、年間100日にも満たないのです。でも勝負所が随所にあるので、男の仕事と言えるかもしれませんね。

庄内浜では刺し網漁でクチボソがかなり捕れてきました。やせているので焼き物サイズは少なく、天ぷらガレイと呼ぶ小さなものが多く、安くておいしいです。唐揚げや天ぷらにして食べてみてください。

(鶴岡水産物地方卸売市場手塚商店専務・手塚太一)
2006年3月31日付紙面掲載

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