今年からサンマ漁の船の選別機というものが取り外されることになりました。どういうことかというと、これまでサンマの網の目は粗かったのですが、細かくしたのです。つまり食用にならない小さなサンマがかからないようにしていました。しかし、水揚げされるサンマが大型魚ばかりになり、価格の下落につながっていました。また、原油の高騰で燃料費が高くなり、採算も合わなくなってきました。餌用のサンマも捕獲することで食用となる大型魚の比率を下げ、相場の下落を阻止するのです。消費者の方には特に影響はないと思われます。
サンマは、イワシやサバと並ぶ青背魚(青魚)の代表選手で、生活習慣病を予防する効果があるという点も注目されています。DHAなどが豊富に含まれ、高血圧症を改善するほか、脳内の働きを活発にし、認知症などを予防する働きがあります。サケと同様に高齢の方にもよい食材です。
太平洋の魚ですから、昔は庄内にはほとんど入ってきませんでした。うちの社長の話だと、新庄付近までは行商の人が持ってきたそうです。地物が捕れるイワシと違って、サンマはちょっと前まではあまり売れませんでした。庄内でも食べるようになったのはここ20年ほどのことです。
最近は、産地以外でも生食、つまり刺し身用にしたり、表面を軽くあぶる「あぶりサンマ」にしたりします。ぬか漬けや南蛮漬けといった加工品も多くあります。すり身はハンバーグにもなります。サンマの味があまりしないので、魚好きの人は「なんだこれ」と思うかもしれませんが、食べやすいので子どもたちにも食べてもらうための工夫とも言えるでしょう。
秋サバも安くて新鮮でいいものが店頭に並び始めました。ぜひお試しいただきたい魚です。青魚ではもっともタンパク質の含有量が多いそうです。もう一つのおすすめはカツオです。これから捕れるカツオを戻りガツオと言います。初ガツオが太平洋を北上し、三陸の沖合でたっぷり餌を食べてゆっくり南へと戻ります。初ガツオの10倍の脂肪がのっています。
こういったものに加え、9月の庄内浜は2カ月休んでいた底引き網漁が解禁されますから、魚屋さんの店頭の顔ぶれもにぎやかになります。ハタハタやガサエビなどの新鮮な魚介類が登場します。庄内の味覚がまた味わえる時期です。魚も「収穫の秋」に旬を迎えるものが多いので、これからは安く買うチャンスも増えると思います。食べ慣れた味もいいですが、新たな発見もありますから、いろんな魚を買っていただきたいと思います。
(鶴岡水産物地方卸売市場手塚商店専務・手塚太一)
2006年8月31日付紙面掲載