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酒田が南限?の八角

このコーナーがスタートしてから50回という節目を迎えました。

最初は、市場の様子や水揚げ状況などわれわれからの一方的な情報発信でしたが、次第に読者から質問も寄せられるようになりました。消費者の生の声を聞くことができてとても勉強になっています。同時に、市場の人間にとってはごく当たり前のことが、消費者の方には浸透していないということにも気づかされました。業界の人間と魚を食べる側との間に大きな壁があったことを知るきっかけにもなりました。これからもタイムリーな情報の提供を心掛け、皆さんにもっと魚を食べていただけるよう分かりやすく説明していきたいと思います。四季折々の魚や、皆さんがご存じないおいしい魚を紹介したいと考えていますので、よろしくお願いします。

さて本題です。「八角という魚を使ったしゃぶしゃぶがテレビの番組に出ていました。酒田の料理屋さんが舞台で、北海道から南の海で捕れて、酒田が南限というナレーションが流れました。初めて聞く魚ですが、おいしいのでしょうか。ほかにも今の時期においしい魚、珍しい魚がありますか」という質問をいただきました。

八角は、全国的には「とくびれ」と呼ばれている魚です。鶴岡の魚市場や鼠ケ関の魚市場などで、冬場にごくたまに見ることはあります。今まであまり気に留めていなかったのですが、調べてみました。うろこが発達した骨盤で覆われ、角張っていることから八角という名が付き、ぶつ切りにすると、断面が八角形になるそうです。雄は背びれと尻びれが非常に大きいのが特徴です。外観はカナガシラやホウボウにちょっと似ています。成魚で雄は50cm、雌は35cmほど。水深200mより浅い砂泥の底に生息していて、産卵、成長の過程については不明とされています。

主に刺し網漁、底引き網漁、カニかご漁で水揚げされます。この魚は白身で、非常に脂がのっていて、刺し身や焼き魚、汁だねにするとおいしいそうです。表面がカナガシラ以上にごつごつしているので包丁が入れにくく、調理が大変です。港の市場に足を運ぶ人でも年に何回も見ないという珍しい魚です。カナガシラが入った箱の中に1匹紛れているということがあるぐらいで、こちらでは買い手もつかず、これまで意識していませんでした。

八角は北海道でよく食べます。背開きにしてみそとネギを載せて焼いた「八角の軍艦巻き」という料理が有名だそうです。刺し身も相当においしいらしいです。硬い皮や骨に薄く衣を付けてパリッと揚げた骨と皮のせんべいという料理もあります。私も今度見つけたらぜひ食べてみたいと思っています。酒田が八角の捕れる南限かどうかは分かりませんが、北の魚であるというのは間違いないでしょう。

とくびれはめったに捕れないので、今回は写真を使うことができませんでした。上が雄、下が雌です=旬を味わうおさかな食材図鑑(つり人社)より

次に今の時期においしい、珍しい魚という質問にお答えしたいと思います。地魚ではありませんが、ホテイウオをご存じでしょうか。三陸地方など太平洋側の人にはなじみ深い魚です。青森や岩手ではゴッコと呼ぶそうです。ゼラチン質が豊富で代表的な料理はゴッコ汁。アンコウ汁を連想させます。日本海では捕れません。外観は丸くふくれていて、ボールにしっぽと口を付けたような姿を想像してみてください。海外で捕れるホテイウオの仲間には、卵がキャビアの代用品に使われているのもいるそうです。そのうち皆さんの食卓にも登場するかもしれませんね。

(鶴岡水産物地方卸売市場手塚商店専務・手塚太一)
2007年3月29日付紙面掲載

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