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夏にうまくなるアワビ

読者から「アワビの旬はいつですか。魚屋さんの店頭でも見ないし、旅館や料理屋にでも行かないと食べることができません。なぜあんなに高いのですか。庄内で養殖もしていますか。刺し身以外のおいしい食べ方を教えてください」という質問をいただきました。

アワビは1年を通じて捕れますが、9月から11月までは禁漁期になっています。旬はやはり、夏と言っていいかと思います。全国各地で捕れ、山形でも岩礁のほぼ全域に分布し、主に水深5~15mのところに生息しています。アワビは「重要水産物」になっているので、県は禁漁期間を設け、幼貝の採捕を禁止しているのです。県の栽培漁業センターでエゾアワビの人工種苗稚貝を生産し、庄内地方の岩礁海岸に放流しています。

アワビの大半は磯見漁で水揚げされます。磯見漁とは、小舟をあやつりながら箱めがねで海底を探すやり方です。天然物と放流貝は色が違います。放流貝は、コンブやワカメなどが餌に使われているため緑色になります。ですから色で区別できるのです。

酒田市の飛島で数年前まで養殖事業をやっていました。近隣では宮城県や岩手県で今もアワビを養殖しています。

意外かもしれませんが、アワビは実は巻き貝なのです。よく見ると表面に貝の巻き柄があります。日本には4種類のアワビがいるとされています。一つは先ほど出たエゾアワビ。ほかにクロアワビ、メガイアワビ、マダカアワビがあり、身の色や殻の色、貝の大きさが違います。海草を餌にしていて、今の時期のアワビはアオサを食べています。これからしばらくして成長すると、身がおいしくなると言われています。それが夏です。今はうまくなろうとしている時期と表現していいかと思います。

アワビが高いのはやはり需要と供給の関係です。漁獲量自体が少ないのです。鶴岡の市場にも毎日入ってくるわけではありません。一方で漁獲量は減少していますから、各家庭で毎日食べたら、アワビはいなくなってしまいます。

食べ方ですが、魚屋さんに聞くと、火を通すと甘みが出るという意見が大勢でした。高級なので生が一番という人もいるかもしれません。貝全体に言えることですが、加熱するとうまみが増します。バター焼きもいいでしょう。蒸し焼きやゆでてスライスして、ワサビじょうゆもいいですね。私も火を通した方がおいしいと思います。

アワビの旬はやはり夏です。今はアオサを食べていて、おいしくなる準備をしているところです

変わった食べ方では、アワビとニンニクを薄く切ってしょうゆに漬け、冷蔵庫で3、4日置いて、そのまま食べるアワビのニンニク漬けという料理があります。北海道の奥尻には、将軍家に献上した干しアワビがあるそうです。アワビを塩もみして2、3日、海水に入れて塩水で煮ます。煮上がったら、まきストーブの上で2週間乾燥させて、一種の薫製にするのです。

店頭でアワビを見ないというのは、価格が高いために置いても売れないということがあるからだと思います。魚屋さんだって「皆さんでどうぞ」と気軽に言えるものでもありませんからね。

(鶴岡水産物地方卸売市場手塚商店専務・手塚太一)
2007年4月18日付紙面掲載

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